大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第179話釘を刺したが

「ルイ様。随分と丁寧な対応をされておられるのですね」
「移民のことかい」
「はい。移民する難民はもちろん、元の住民にまで懇切丁寧に対応されていると報告を受けております」
「ガビの使い魔からかい」
「はい。昔からのミカサ家の者ならばともかく、新たに支配下に入った旧王家の官吏を、そう簡単に信じる事は出来ません」
「そうだね。油断していて、民が虐待されたり搾取されたりしたら、それも女王の失態になってしまうからね」
「ルイ様の御陰で、私も無尽蔵の魔力を魔界から手に入れることが出来るようになりましたから、それを有効に使わせて頂いております」
「それはよかった。魔界を壊滅させてしまったかもしれないから、その犠牲が無駄にならないように、多くの人を助ける事に魔力を使いたかったのだよ」
「それに、ルイ様がまた、自由な旅に出てしまわないように、見張らないといけませんから」
「それは大丈夫だよ。前にも言ったけれど、ガビに大きな責任を背負わせてしまったから、ガビだけおいて、自分が好き勝手するのは気が引けるよ」
「その御言葉が本当ならうれしいです」
「本当だよ。余はガビに嘘などつかないよ」
「はい。私はルイ様を信じております」
「あぁぁぁ、熱い会話を止めて悪いのだが、話していいかな」
「ああ、構わないよ。ダイ」
「まあ、まあ、まあ。何て気の利かない家臣なのかしら」
「姫様。今回の件は、全て臣の油断と未熟から引き起こした事ですので、言い訳のしようがありませんが、それでも、こう毎日主君の御惚気を聞かされるのは辛いのですが」
「今回の件だけではありませんよ。私の愛しいルイ様と二人で旅した事、恨んでいますからね」
「もう許して頂けませんか。俺だって好きで旅したわけではないのですよ。御父君のミカサ公爵閣下から、命に代えてもルイ様を御守りするように命じられたので、仕方なく御供させていただいたのです」
「余からも頼む。もうダイを許してやってくれ」
「分かっておりますよ、ルイ様。でも、まだ許すと言うわけにはいきません。言ってしまったら、ダイをからかえなくなってしまいます」
「姫様‥‥‥」
「やれやれ。もうしばらく我慢するしかないようだ。ダイ」
「ふふふふ。負い目が残っていれば、ルイ様に命じられても、私に黙って一緒に旅に出たりしないでしょ」
「いや、だから、黙って旅に出たりしないよ」
「私も、姫様の御心を踏み躙って、ルイ様と旅に出るような事は絶対しません」
「ふふふふ。そうは言っても、ルイ様が自由な心を持っておられることは、分かっているのですよ。一つ所に、何時までも留まれる方ではない事は、重々承知しておりますから」
「ガビ‥‥‥」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品