大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第164話ルイ対ダイ

「ダイ。正気に戻って下さい」
「ウガァルルゥ」
「私です。ルイです」
「ウガァルルゥ」
ルイの言葉も虚しく、ダイがブレス攻撃を放った。
金剛石級魔晶石使い魔を攻撃した時と同じように、激烈な攻撃だった。
それでも、ダイの玉鋼級魔晶石使い魔を巻き込まないように、収束式ブレスだったので、ルイは余裕を持ってかわす事が出来た。
当然玉鋼級魔晶石使い魔を盾にするように移動したが、万が一ダイが玉鋼級魔晶石使い魔を犠牲にすることも考慮して、その時でも逃げ切れる速さを準備していた。
「話をしましょう。人型に戻って下さい」
「ウガァルルゥ」
ルイの呼びかけに対して、帰って来たのはブレス攻撃だった。
何度も同じやり取りを繰り返したが、それでもダイは、玉鋼級魔晶石使い魔を犠牲にしようとはしなかった。
だからルイも、余裕を持って避け続けることが出来た。
ルイの実力ならば、ダイのブレス攻撃を避けながら、玉鋼級魔晶石使い魔を防御魔法で隔離し、魔力を奪ってから自分の世界に転移させることは可能だった。
だがそんな事をすれば、ダイを怒らせてしまうかもしれない。
これ以上怒らせてしまうと、説得が更に難しくなってしまう。
そう考えて、ひたすら声掛けをして、ただブレス攻撃から逃げていた。
「何をなされておられるのです、ルイ様」
「何でここに来たのだ、ガビ」
あまりに集中していたルイは、自分がどれくらいの時間ダイを説得していたかを自覚していなかった。
ガブリエラ女王が政務を終えて戻り、ルイが何処にもいないことに気が付き、八方手を尽くして探し回り、ようやく見つければ魔界にいたのだ。
安堵と怒りに震えるガブリエラ女王が、護衛と女中の制止を振り切り、魔界に転移してきたのだ。
「ルイ様が、私に無断でここに来たからではありませんか」
柳眉を逆立てて本気で怒るガブリエラ女王に、ルイは自分の失敗を悟った。
人目には痴話喧嘩に見えるかもしれないが、今回は違った。
何時もの喧嘩は、甘えと愛情にプレイが加わった喧嘩だが、今回は本気で怒っていた。
「すまない。全部余が悪い。一緒に帰ろう」
「それでいいのですね」
全然怒りが収まらないガブリエラ女王だったが、それでもルイへの愛情は一ミリも減っていなかったので、先ずはルイを安全な人間界に戻す事を優先した。
ルイとガブリエラ女王が言い争っている間も、ダイは息も尽かさぬ間隔でブレス攻撃をするのだが、ルイもガブリエラ女王も軽やかにブレス攻撃をかわすのだった。
そして不意に、ルイとガブリエラ女王が魔界から消え去った。
この後で、延々とガブリエラ女王から御小言を頂くことになるルイであった。

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