大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第162話転移隔離

「これでダイを引き出すことが出来るかもしれない」
ルイの独り言と同時に、無力化されたダイの魔晶石使い魔が此方の世界に飛ばされて来た。
白銀級以下の単独魔晶石使い魔が編隊を組み、魔界の無尽蔵の魔力を利用して、金剛石級魔晶石使い魔が無力化した、ダイの魔晶石使い魔を此方の世界に飛ばしてくるのだ。
本来なら、金級以下の単独魔晶石使い魔など、ダイの玉鋼級魔晶石使い魔に相手にならないのだが、編隊を組んで魔法陣を築く事で、ギリギリ対抗出来ていた。
魔界と言う特殊な環境で、無尽蔵の魔力が溢れているから出来る事で、此方の世界では使えない手法だ。
次々と此方に飛ばされてくる、ダイの玉鋼級魔晶石使い魔を、ルイは自分の魔法袋に入れて隔離した。
既に魔力が尽きているから、万が一ダイが狂っていたとしても、動き出すとは思えないが、ダイほどの古強者なら、ルイの考えつかないような方法で、再起動させてしまうかもしれない。
だが魔法袋の中に封じておけば、いくらダイでも何も出来ないだろうと考えたのだ。
余りにも順調なので、数分で五十体近い玉鋼級魔晶石使い魔を魔法袋に隔離することが出来た。
このままいけば、全ての玉鋼級魔晶石使い魔を封印できると考えた時、圧倒的な魔力量の生物が、急速に金剛石級魔晶石使い魔に接近してきた。
ルイは一瞬でダイだと分かった。
同時に生存本能が緊急事態だと知らせてきた。
いや、一瞬で感じたと言った方がいい。
即座に金剛石級魔晶石使い魔と単独魔晶石使い魔を、此方の世界に強制転移させた。
だがダイの気配を放つ怪物は、全ての魔晶石使い魔が逃げ切る前に、圧倒的な攻撃を放った。
その破壊力は、金剛石級魔晶石使い魔であろうと、瞬殺するほどのモノだった。
魔界に溢れる魔力を利用しても、瞬間的に利用できる魔力量は、金剛石級と言う限界がある。
ルイが逃げ損ねた単独魔晶石使い魔も情報から計算した破壊力は、緋緋色金級どころか、青生生魂級さえも超えていると思われた。
だがルイの魔晶石使い魔達は、一体も欠けることなく生き延びていた。
ダイの玉鋼級魔晶石使い魔を転移させる魔法詠唱の途中だったことで、自分達が逃げだす転移魔法が間に合わないと思われた編隊は、ダイの玉鋼級魔晶石使い魔を盾にして、陰に隠れることにしたのだ。
ダイが問答無用で、自分の玉鋼級魔晶石使い魔もろとも消滅させようとしたら、一緒に消滅させられていただろう。
だがダイは、自分の玉鋼級魔晶石使い魔を避けて攻撃してきた。
ここにルイは光明を見出した。
まだダイに理性と慈愛が残っていると。

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