大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第154話断念

「ガビの言う通りだ。余が間違っていた」
前日ルイとガビは、公務を務める部屋でよく話し合った。
私室に戻ってからは、公務に関する事は一切話さず、互いを癒し合うように、ゆったりとした時間を過ごした。
寝室では、互いの愛を確かめ合った。
ガビの真心の優しさが、頑ななルイの心を解してくれた。
正義の気持ちとは言え、洗脳とも言える教えを受けては、千差万別の現実には、臨機応変に対応できない。
特に非常時には、正義が衝突することが多い。
全ての人に公平に正義と慈愛を与える事など出来ない。
今回の件も、ガビと民を選ぶのか、ダイを選ぶのか、決断しなければいけなかった。
「魔界に行くのを諦めて下さったのですね」
「ああ、魔界に行くのは諦めた。だが、ダイを助ける事を諦めた訳ではない」
「分かっております。ルイ様なら、きっとそう言って下さると、信じていました」
「信じてくれてありがとう」
「その御顔だと、具体的も思い浮かんだのですね」
「ああ、思い浮かんだ。魔晶石使い魔を魔界に送る」
「魔族とスライム討伐に使った魔法石使い魔を、魔界用に改造なされるのですね」
「いや、あれは隣国が攻め込んできた時の為に、国境線に配備しておく」
「では、昨日配給用に処分した魔獣から採った魔晶石を使って、新たな魔晶石使い魔を創り出されるのですか」
「ああ、銅級、鉄級、銀級の魔晶石百万個を魔法陣に組み込んで、金剛石級の使いを創り出す」
「それほどの魔晶石を御持ちなのですか」
「昨日配給に使った魔獣の魔晶石だけで、それほどの量があったのですね」
「ああ、四百万六十人分の食糧だからね」
「金級、白金級、白銀級の魔晶石は使われないのですか」
「その三つを使えば、千個で同じ金剛石使い魔を創り出せるけど、魔力を蓄えておく魔晶石を持っておかなければいけないからね」
「では今日も、一緒に魔境に狩りに行きましょう」
「いや、ガビには他に頼みたいことがあるのだ」
「まぁ、一緒にいたいですが、魔界に行くことを断念してくださったのですから、私も多少の所は諦めないといけませんね」
「ありがとう、ガビ。頼みたいのは、昨日ガビが狩ってくれた、魔獣を売却して欲しいんだ」
「まあ、そうでした。流石に昨日のような狩り方をしてしまったら、直ぐに魔法袋が一杯になってしまいますね」
「そうなのだ。今日は別の魔境で狩りをする心算なのだけれど、ガビの方の魔法袋も軽くして置いて欲しいんだ」
「分かりました。早速手配いたします」
「ただ気を付けておいて欲しいことがあるのだ」
「何でございますか」
「魔獣肉の値段が値下がりし過ぎて、冒険者や狩人の狩った魔獣が、安く買い叩かれないように、相場に気を付けて欲しいのだ」
「そうですね。私達の所為で、困る人が出ては困りますね。飢える人をなくそうとして、新たな難民を生み出したりしたら、本末転倒ですね」
「ああ、頼んだよ」

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