大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第138話大公の思惑

「これは最高の機会かもしれぬな」
「魔王陛下を見殺しになされるのですか?」
「魔界は弱肉強食が掟だ。異界からの侵略者に殺されるようでは、魔界の王に相応しくあるまい」
「それはよいのでございますが、侵入者が魔界に居座って玉座を望んだら、大公殿下はどうなされるのでございますか?」
「もちろん倒す。そのための準備をしておる」
「眷属の方々に用意させている、攻撃魔法陣でございますか?」
「そうだ」
「侵入者が現れてから描いたにしては、あまりに大きく複雑ではありませんか?」
「分かっていて聞くな」
「魔王陛下を殺すために、前々から用意されていたのですね」
「今さらそれを確認してどうする」
「私も協力させて頂きたいのです」
「今から魔法陣に参加したいと言うのか?」
「はい」
「邪魔だな」
「そこをまげてお願いいたします」
「途中で裏切られては、せっかくの魔法陣がダメになる。味方して余に忠誠を示したいと言うのであれば、独自で魔王か侵入者を攻撃してみせろ」
「分かりました。いまからではあまり大規模な魔法陣を作ることはできませんが、少しでも忠誠を示せるように、努力いたします」
「好きにするがよい。ただし邪魔をするようなら容赦はせんぞ!」
「重々承知しております」
魔界では、魔王に成り代わる野望を持っていた大公が、ダイの侵攻を好機ととらえ、かねてから用意していた反乱に踏み切る決意を固めていた。
同じように、少しでも勢力を広げたいと思っていた野心家の魔族が、魔王に忠誠を示すのではなく、反魔王派に付いて立場を大逆転させようとしていた。
それは魔王に近い魔族が、魔王の命令に従いダイを討伐に向かい、なす術もなく虐殺されていく数が増えると、同じように数を増やしていった。
そして魔王に成り代わろうとしている大公は、以前から準備していた魔法陣を急いで起動状態にしようとしていたが、その目標は魔王城に定められていた。
普段なら大公の魔力では、眷属全てを動員して魔法陣を発動させても、魔王の魔力で敷かれた魔王城を護る防御結界を破壊することはできない。
そして魔王城の結界を破れないような攻撃力では、魔王を殺すことなど絶対にできない。
だが今の魔王は、ルイの反撃を受けて大きなダメージを受けており、防御の為に魔力も使い切っていた。
新たに侵入してきたダイが魔王城の防御結界を破壊してくれれば、大公にも魔王を殺すチャンスがあるかもしれないのだ。
いや、ダイが魔王と死戦を演じれば、ダイも魔王も著しく傷つく可能性が高い。
そうなれば、ダイと魔王の双方を一度に殺してしまう事が可能だと、反魔王派の大公は考えていたのだ。
大公が、今が一番の好機だと考える理由は、魔王派の有力な王子や大公が、ダイによって皆殺しにされかけているからだ。
魔王を殺した後で当然生じるであろう、新魔王の座をかけた戦いで、有力な対抗相手になるはずの王子や大公が、すでに皆殺しに近い状態になっているのだ。

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