大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第106話魔石とダンジョン

「ダイは魔晶石を創り出す方法を知っていますか?」
「いえ、さすがにそこまでは知りません。若様と同じように、低級な魔核に魔力を込め、魔核に魔晶石と同じだけの魔力をため込むくらいです」
「まあそれでも同じ大きさの魔核に、百倍、千倍、万倍の魔力を蓄えられるから、非常時にとても役に立つし、さきほどのように誰かに与える時も役に立ちますね」
「はい。計画通りに行けば、ダンジョンにも人間や獣人にも、最良の共生関係が築けると思われます」
「そうですね。私たちが生きている間は魔晶石が不足する事はないでしょう。ダイの寿命がどれくらいの長さかは分かりませんが、私が死んだ後の魔晶石に確保を考えておかねばなりませんね」
「・・・・・」
「ダイにこれを言うのは酷でしたね」
「いえ。ですが移民する人間や獣人をどうするのですか?」
「今は非常時の為に、事前に用意しておくだけでいいでしょう」
「念のために一度ベルト王国に帰られますか? そうなされてくだされば、我が主人の公女殿下も喜ばれます」
「そうですね。私もガビには会いたいのですが、エステ王国がどうなっているかで、帰ると父王陛下や民に迷惑をかけてしまうかもしれません」
「ですが最近魔族の襲撃もありませんし、バカ王女も諦めたのではありませんか?」
「そうだったらいいのですが、バカは治らないという言葉もありますから、迂闊に帰るわけにもいかないでしょう」
「ではフィン連合王国くらいまで戻られますか?」
「う~ん、それも気が進みませんね」
「王太子殿下に、フィン連合王国の国王になれと言われることですか?」
「そうです。王太子殿下も私と血の繋がった兄だけあって、基本責任を背負うのが大嫌いなのです。ですが嫡男に生まれ育った事で、父王陛下をはじめとする一族に鍛えられ、仕方なく王太子の責任を果たされておられるのです」
「では本来背負う必要のなかったフィン連合王国の王位は、若様に返したいと思われておられるのですね?」
「まあそうだろうね。私がフィン連合王国に戻ったら、間違いなく口げんかになるでしょうね」
「やれやれ。多くの国の王族が、王位欲しさに骨肉の争いをしていると言うのに、若様と王太子殿下は、王位の押し付け合いですか?」
「当然です! 責任の重さと権力を考えれば、あんな大変な仕事をやりたいと思う方がどうかしています。あんなものを欲しがるのは、権力欲が強過ぎる方か、特殊な趣味の方なのでしょう」
「ですが帰るのはともかくとして、状況を知る必要がありますから、使い魔くらいは送ってください」
「え~、嫌ですよ」
「若様が嫌と言われても、状況を知らなければ正しい判断が下せませんから、私は送りますよ」
「しかたありませんね。ダイにまで使い魔を送るなとは言えませんから、好きにしてください」
こうしてルイとダイは、ベルト王国を囲む状況を知ることになるのだが、その前に少し事件があった。

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