大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第104話ダンジョン家臣

「逃げるな!」
ダイの迫力ある一喝で、ダンジョン本体は逃げるに逃げられなくなった。
「殺したりしないから、若様の配下になれ。なるのなら、絶対に飢えさせたりしない。分かったら返事をしろ」
「本当に殺さないのだな」
「大丈夫だ。若様は約束を破る方ではない」
「あんたはどうなんだ?」
「若様の害にならない限り、約束を破ったりせん」
「なんか信用できないな」
「話をする気がないのなら、正々堂々と戦うか?」
「絶対に勝てると分かっていてそう言うのは、卑怯じゃないか?」
「魔境内は弱肉強食だろ」
「分かったよ。で、どうしろと言うんだい」
「まずは報酬から教えておきましょう。ダンジョンさんには、定期的にこれくらいの魔晶石を差し上げますから、階層部分を人間が住めるようにしてもらいたいのです」
ルイがダンジョンに見せたのは、大きさこそ銅級・鉄級・銀級の魔石なのだが、その輝きは青生生魂級と言う、この世界の常識を覆すものだった!
「何だいこれは?! こんな魔核見たことがないよ!」
「これをまずは百個さしあげましょう。これだけあれば、一月や二月は何も食べないでも大丈夫でしょう?」
「それは大丈夫だよ。今までと同じでよければ、一年は何も獲物がなくても飢えることはないけど、でもその分難しい事をしないといけないんだよね?」
「そんなに難しくはありませんよ。人間が暮らしやすいように、ダンジョンの壁は光苔で覆ってくれて、こういう洞窟形式のダンジョンではなく、横部屋の多い階層式のダンジョンにしてもらいたいのです」
「魔獣たちの為に作っていた横穴を、沢山作るのか?」
「横穴一つに一つの部屋ではなく、家族の数だけ部屋を作ってもらいたいのです」
「群れの一頭一頭に部屋が必要なのか?」
「人間や獣人は、群れではなく家族と言うのですが、言っている意味は同じです。そうです。一人に一部屋欲しいですし、台所や居間はもちろん、食料保存部屋や家畜部屋も必要ですね」
ルイは奥山岳地帯で妖精族が作ってくれた横穴住居を参考に、ダンジョンに作って欲しい住居を要求した。
所々でダイも助言したが、基本的な部分で意見の相違はなかった。
「それとダンジョンが独自で運営する部分をあった方がいいから、入り口を多くして、人間用とこの魔境に住む魔物用に分けましょう」
ルイの考えは画期的なダンジョン設計で、今まで通り魔物を引き寄せて、魔物から栄養・魔素・魔力などを吸収する共生部分と、人間や獣人を住ませて共生する部分に分かれた構造だった。
人間や獣人の共生部分は、鶏や家畜をダンジョン内で養殖することで、毎日必ずダンジョン内で魂魄の吸収が可能になるので、ダンジョンとしても喜ばし事だった。
今までのようにダンジョンを住居としている魔物が狩りに出た場合は、殺すのがダンジョン外になるので、魂魄の吸収が出来なかった。
だから魂魄を吸収するには、ダンジョン内で狩りが行われなければならず、せっかくダンジョン内に住んでくれている魔物を、外から引き寄せた魔物に殺させなければいけなかったのだ。
人間や獣人がダンジョン内に住んでくれて、毎日家畜を屠殺してくれるのなら、魂魄の事を心配しなくて済むのだった。
「分かった! その通りにやってみよう!」

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