大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第100話薬草採取

「ここの薬草は種類も多く、質もよいように思うのだけど、ダイはどう思いますか?」
「私もそう思います。そもそも森の植生も豊かで、住んでいる魔獣も偏っておらず、いろんな素材を一つの魔境で集められる、最適の場所だと思われます」
「生産の得意な人にとって、理想的な魔境だと言えますね」
「はい。職人と狩人にとったら、これ以上の環境はないと思われます」
ルイとダイは、新たに発見した魔境を入念に探索していたが、危険な魔獣とも多少は遭遇したが、それは一般的な魔境と同程度で、最近入った魔境の危険度とは比べ物にならないくらい低いモノだった。
今回は特に魔獣を狩る必要もないので、気配を隠す魔法と気配を消す魔法を使い、無用な殺傷はせずに探査に重点を置いていた。
これが人間や獣人が入る魔境なら、少しでも彼らの安全を高めるために、手当たり次第に魔物を狩るのだが、この魔境は人跡未踏の地にあり、人間も獣人も入ることがないので、魔物を狩る必要がないのだ。
だからと言って何もしていないわけではなく、薬草や木の実や果物と言った、殺傷することなく手に入る価値あるモノは、手当たり次第に採取して魔法袋の中に放り込んでいた。
特に薬草と薬の原料になる木々や果実や果物は、再生に障害のない範囲でできるだけたくさん集めていた。
そしてその薬草などの質がとてもよかったのだ。
薬草を薬にする場合でも、蟲に食べられた周囲が変質していたり、人間や獣人が下手糞に集めた痕が変質したりしていると、その部分を丁寧に取り除かないと薬効が低下してしまうのだ。
いや、低下するというよりは、普通の薬になってしまうのだ。
本当なら粗悪な部分を取り除くことで、一割や二割は高品質な薬にすることができるのだが、初心で質のいい薬草が出回らないのと、薬師の知識と技術が低いことで、高品質の薬はベルト王国の専売品となっている。
元々はミカサ一族がベル王家にもたらした知識であり技術なので、ベルト王国でもミカサ公爵家とベル王家に連なる者しか知らない知識であり技術なので、他国では絶対に作れないモノなのだ。
それは金級以上の魔法薬も同じで、銅級から銀級までの並みの魔法薬なら多くの国でも作れるのだが、金級以上の魔法薬が作れるのは、極東の国と極東から流れてきたミカサ公爵家が住むベルト王国だけなのだ。
そしてベルト王国といえども、質の悪い材料から高品質の魔法薬を作るとなると、多くの手間と時間が必要になるので、ルイとダイが初心で質の良い薬草を集めて持っていけば、手間と時間を節約することができるのだ。
自分でも薬草を作るルイとダイは、その事をよく知っているので、多少探査の時間が遅れようと、眼に入った薬草と魔法薬の原料になる品々を、結構必死で集めることになっていた。

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