大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第86話流浪

「やっぱり旅はいいね」
「さようでございますね。ですが本当によかったのですか?」
「何がだい?」
「王位を捨ててしまってです」
「ああ、王位なんて責任が重くて肩が凝るだけだよ」
「本心でございますか?」
「本心だよ」
「では恐れながら聞かせて頂きますが、我が主人、ガブリエラ公女殿下と結婚すると言う事は、公爵家に責任を持つと言う事ではありませんか?」
「それは違うよ」
「何が違うのですか?」
「確かに私はガビと結婚するけれど、公爵になるわけではないよ」
「しかし、女性は貴族家の当主になれない決まりでございます」
「ミカサ公爵家は特別だから、他の貴族家と同列には扱えないよ。ミカサ家の力を継がない者が当主についてしまったら、一族や眷属が言う事を聞いてくれなくなるからね。王家もちゃんと理解しているよ」
「ですがそれでは他の貴族の方々から批判が出るのではありませんか」
「そのようなバカな貴族など廃してしまえばいいよ」
「本気でございますか?! 若様はともかく、国王陛下や王太子殿下までそのようなお考えなのでございますか?!」
「それくらいの考え方をする一族でなくては、君たちミカサ一族を我が国に向かえたりしないよ。家臣の中でも別格であり、王家の一族でもある公爵の地位を与えるほど、我が一族は実力主義なのだよ」
「はい。確かにそうでございました!」
「四方からいつ攻め込まれるか分からないのが世の中だよ。国力を弱めるような、バカなことを言う貴族など、邪魔なだけだよ」
「はい!」
「だからね。私はガビと婿養子になって、何もせず悠々と暮らさせてもらうのさ。でも今回の件で少し時間が出来たので、世の中を見て回って見聞を広めさせてもらいたいのだよ。だから宜しく頼むよ」
「はい。承りました!」
「じゃあ次はどの国に行こうか?」
「オーランド王国をさらに南に行けば、ダノン王国と言う国でございます」
「私たちが創り上げた魔境王国をさらに東に行ったら、どこに辿り着くか知っているかい?」
「あの山岳地帯や魔境を越えて、さらに東に入った者の話は聞きません。この大陸を流浪していた我が祖先も、ベル王家の方々に救っていただいたので、魔境より東には行っておりません」
「だったら私たちが初めていくことになるのだね?!」
「そうなります」
「一緒に行ってくれるかい?」
「この世の果てまでお供させて頂きます」
「クリューサーオールとペーガソスなら、あれくらいの山々なら軽く越えてくれるよね?」
ルイに聞かれたクリューサーオールとペーガソスは、大きくいなないて答えるのであった。

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