大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第85話三魔族

「鏡よ鏡、もっと強い魔族の召喚法を教えなさい!」
「ありません」
「なんですって?! ありませんとはどう言う事よ! あなたはこの世の全てを知っているのでしょ?! だったらもっと強い魔族の召喚方法を知っているでしょ!」
「知りません」
「どうしてよ」
「どうしても、こうしても、この世に知られていない事は知らないのです」
「だったらどうすればいいのよ」
「知っているモノに聞くことでございます」
「知っている者に聞く? あなた以外の誰に聞けというの?!」
「魔族に聞くのです」
「魔族? 新たに強い魔族を召喚する方法を知っている魔族を呼び出せというの?」
「いえ。今まで契約した魔族に聞くのです」
「なにを言っているの! あいつら臆病風に吹かれて、いくら呼んでも出てこないじゃないの!」
「ベル王家と戦えというから出てこないのです。もっと強い魔族の召喚方法を聞きたいから、それだけ教えに来いと言われたら大丈夫です」
「本当に大丈夫なの?」
「魔族との契約は厳格なものでございます」
「だったらなぜ今まで出てこなかったの!?」
「魔族も契約した者が死んだり、契約した一族が死に絶えたりすれば、契約が無効になります」
「今まで契約した魔族が死に絶えたというの? だったら教えに来ることもできないじゃないの!」
「戦うほどの力を失ったので、契約が休止しているのです。再び戦力が整えれば、またやってきます」
「それはいつなの?!」
「千年後くらいでしょう」
「なんて役に立たないの!」
「人間と魔族の寿命の違いでございます」
「それでは私が圧倒的に不利でしょ!」
「魔族相手の契約でございますから、人間が有利になるなどありません」
「本当に、あなたは役に立たないわね!」
「・・・・・」
「しかたないわね! では今まで契約した魔族を呼び出す方法を教えなさい。また一万人も殺せと言うのではないわね?!」
「一度契約を交わしておりますから、その必要はありません。ヤギを生贄にするだけで大丈夫でございます」
「だけ?! 魔族がいなくなった王宮で、私が生贄のヤギを簡単に手に入れられると思っているの?! 上手くヤギを手に入れる方法を教えなさい!」
「ではこうなさいませ。一万人の老人や貧民を殺した将軍を表彰する為に、大々的に宴会を催し、王女殿下直々にヤギを料理するので、そのためにヤギを用意しなさいと言うのです」
「なるほど、それならヤギを持ってこさせることができるわね。でも料理などできないわよ?」
「誰も王女殿下が本当に料理するとは思っておりません。料理人が作るにしても、侍女が作るにしても、王女殿下が直々に作らせて、配下に与えたという話にすればいいのです」
「そう、ではそうするわ」

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