大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第80話逃亡

「おとうさん、これおいしい!」
「そうか、美味しいか」
「うん!」
あちらこちらで給食を食べる親子の姿がある。
父子家庭が多いのは、売ればお金になる母親が連れ去られてしまった家族なのだろう。
ルイとダイは、新生フィン連合王国の民を卑しい人間にするつもりはなかった。
働きもせず、人から恵んでもらえるのが当たり前、当然の権利だと考えるような、卑しい人間を創り出すなどできなかった。
ルイとダイの理想は、働く事、何かを創り出すことに誇りと喜びを感じるような、心の豊かな人間の住む国を創り出すことだった。
だからこそ、長年の圧政と戦争の被害が激しい中でも、多くの仕事を創り出し、仕事をすることで正当な対価を受け取る仕組みを創り出したかった。
その為に戦争で破壊された残骸を片付けたり修理したりすることを、国民の義務や税ではなく国軍の仕事として、国軍に大量も国民を雇う事で給料と給食を支給したのだ。
大量に必要な給食については、旧フィン王国の王族・貴族・大商人・聖職者が不正にため込んだ物を接収していたし、フィン王国軍やオーランド王国軍が兵糧としていた物を奪っていたから数は足りていた。
それと少しでも美味しい食事を食べさせてあげたいルイとダイが、どれだけ大量に狩っても数の減らない魔境の魔獣を供出したので、全く心配することなく美味しい給食を大量に支給することができた。
「学校を作りたいのですが、教える人間がいませんね」
「教師はベルト王国から送ってもらえばいいのではありませんか」
「本当はそうしたいのですが、それはフィン連合王国がベルト王国に併合してからの方がいいでしょう」
「オットー王太子殿下に手柄をお譲りになるのですか?」
「あまりゼッド国王に実績がありすぎると、フィン連合王国の王位をベルト王国の国王に禅譲した後でやりにくくなるでしょうからね」
「やはり王位を譲られるのですね」
「責任を負うのは苦手なのですよ。できれば無責任にのんびりと生きていきたいのです」
「そう言われる割には、色々と積極的に介入されていましたが」
「他にする人がいなかったからですよ。助けられるのに助けなかったら、後で悪夢にうなされてしまいますから」
「そうおっしゃられるなら、そう言う事にしておきますが、今直ぐ逃げ出すというわけにはいきませんよ」
「それは分かっていますよ」
「では後の苦労はオットー王太子殿下にお任せするとして、今は民を助ける事に専念されたほうが、後々悪夢にうなされないのではありませんか」
「そうですね。ではこうしましょう」
「どうされるのです?」
「兄上にフィン連合王国の摂政になっていただくのです」
「それは、これから行う全ての福祉政策を、オットー王太子殿下も名前で行うと言う事ですか?」
「そうです。そうすれば民も兄上を慕う事でしょう」
「まあ、そうなるでしょうね」
「ではそういう話で進めましょう!」
ルイは国王の仕事と責任から逃げる為に、長兄のオットー王太子に会いに行くのであった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品