大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第73話穴熊獣人

「ではこれを使ってレザーアーマーとスケイルメイルを作ってくれるかい?」
「お任せください若様」
「では私の分とルイの分を作ってくれ。それとビッグクロコダイルの皮を使って、この村の自警団員が使うレザーアーマーも作ってもらいたいのだが?」
「お任せください。最初に若様とダイ様のレザーアーマーとスケイルメイルを作らせて頂き、その後で自警団用のレザーアーマーを作らせて頂きます」
「任せましたよ」
「はい。どうかご安心してください。この技術のお陰で生き延びてこられましたから」
ソフィア陛下の発案で、連日連夜大宴会が行われたが、どうやら妖精族は騒ぐことが大好きなようで、盛り上げ方もとても手慣れていて上手なので、最初は恐れと遠慮で愉しめなかった元奴隷たちも、徐々に心から愉しめるようになっていった。
そして心地よく妖精ワインに酔った元奴隷たちは、徐々に胸襟を開いて自分の生い立ちや奴隷時代の事も話せるようになり、何が得意であるか何が苦手であるかなども互いに理解できるようになっていった。
そんな中には山岳地帯以外から攫われてきた獣人族もおり、山岳地帯には一人もいない、この地方には珍しい獣人族もいた。
そこで見出したのが穴熊獣人のカメロンで、彼女は裁縫や刺繍の天才であり、その才能のお陰でフィン王国でも生き残ることができていた。
もし彼女の裁縫や刺繍が金を生むほどの才能でなかったら、王太子の虐待癖の犠牲になって、とうの昔に殺されてしまっていただろう。
そんなカメロンの才能と技術は、ワイバーンの革からレザーアーマーを作るだけではなく、鱗も上手に組み込み、柔軟性と強靭さを兼ね備えたスケイルメイルにまで昇華させることができた。
いや、そもそも最も困難かもしれない、ワイバーンの皮を革に加工することすらできると言う、この村にはなくてはならない存在なのだ。
この村の隣には、事もあろうに金剛石級のワイバーンが群生しており、ワイバーンの皮を革に加工したり、革からレザーアーマーを作り出したりできるなら、その経済的価値は一国の財政を支えるほどのモノなのだ。
だが幸運と同時に不幸な事もあった。
今回助けることができた獣人の中に、穴熊獣人はカメロン一人だけだったのだ。
だからと言って、新たな穴熊獣人を攫ってくるなどルイとダイに出来る事ではないので、穴熊獣人の集落を見つけ出し、スカウトして移民してもらうか、その村にワイバーンの皮を加工してもらうことになる。
だが今はまだフィン王国がどう動くか分からないし、戦力を著しく失い国内も大混乱しているから、隣国から攻め込まれる恐れもあった。
そうなると隣接する母国・ベルト王国も、自分が引き起こした混乱のせいで戦乱に巻き込まれてしまうかもしれず、山岳地帯から動くに動けない状況であった。

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