大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第51話交渉

「さてオリビア、今度こそドラゴンと戦ってもらうよ」
「分かった。強いか?」
「キングリーチよりも強いけど、狩らなくていいからね」
「狩らない?」
「あくまでも強くなるための相手として、上位属性竜を選ぶだけだから」
「分かった」
狩りとオークション出品の手続きに時間が掛かってしまったので、日暮れまであまり時間がなかった。
いや、魔境に入る冒険者に上位属性竜と戦っているところを見られないように、ルイはわざとこの時間を選んだと思われる。
この魔境に普段入っている冒険者が、到達できないほど奥地まで入り込んで、そこで安眠をむさぼっていた水竜を発見した。
「水竜さん、悪いけれどちょっと起きてくれないかな」
「私の眠りを邪魔するのは何者だ?」
「ただの魔術士だけど、友達に悪い竜と戦う時の訓練をさせてあげたいので、起きて相手してくれないかな」
「なぜ私がそんなことをしなければいけない」
「理由はないのだけど、水竜さんは優しそうだからお願いしたのだよ」
「ならばおやつ代わりに魔力をよこすか、美味しい料理を作って持ってこい。そうしたらその女に竜との戦い方を伝授してやろう」
「ならこれを食べてみてくれなか。口に合うなら大量に作って持ってくるよ」
ルイは魔法袋から作り置きの料理の一つを取り出した。
「ほう! これは美味いな。これを大量に作って持ってくるのなら、戦い方を伝授してやる」
「気に入ってくれたのなら、定期的にこの料理を持ってくる代わりに、欲しいモノがあるのだよ」
「欲しいモノ? 何が欲しいというのだ」
「水竜さんの古くなった鱗や爪、できれば牙も欲しいのだよ」
「人間! お前も私の身体が目的か!」
「できればでいいのだけれど、手に入れることができれば、多くの人が飢えずにすむんだよ」
「ふ~む、自然にはがれ落ちた鱗なら、別にどうしてくれても構わないが、爪や牙を与えた後で襲って来るような卑怯者がいたら、この魔境の魔物を率いて人間を滅ぼさねばならなくなるぞ」
「私たちが襲うことはないけど、他の冒険者が偶然襲うかもしれないから、爪や牙は諦めるよ。でも鱗はもらって行っていいのだね」
「その料理を持ってくるのなら構わんぞ。この水辺のあちらこちらに沈んでいる」
「じゃあそう言う事で、まずはオリビアと戦ってください」
「かかってくるがいい、女」
水竜の言葉を聞いたオリビアは、恐れることなく突っ込んでいった!
だが水竜の巨体と比べてオリビアはあまりに小さく、魔斧槍を振るって勇敢に攻撃をしようとするも、水の中にいる水竜を攻撃することはできなかった。

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