大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第30話地下村

翌日も魔境で狩りを続けたのだが、日に日に老人や孤児たちが増えるのだった。
「若様、ダイ殿、このままこの魔境町で暮らされるのですか?」
「そんなことはありませんよ。なぜそのような事を聞かれるのです?」
「しかし若様。このままでは若様を頼って、この国にいる生活に困った者たちが全てこの魔境町にやってきますよ。若様は彼らを見捨てられないのではありませんか」
「そんなことはないぞ、ガルド。若様はレイラと若い冒険者を鍛えて、食べていけるようにしたらこの魔境町を離れるのだ」
「それはよかった。それでその日は何時になりますか? 我々も若様とダイ殿の力がなければ旅が続けられないのですが、そろそろこの町で商売するのも限界なんですよ」
隊商のリーダーであるガルドは、この国を今の戦力で移動するのは危険だと判断して、ルイとダイと一緒にこの国を移動したいのだが、ダイがこの魔境町の冒険者を大量に殺したので、山賊(領主軍の偽装)を倒したときの武具をこれ以上売れなくなっていた。
他の物を売りたくても、貧しいこの国では領主のような貴族以外は物を買う余裕がなく、その貴族たちは買うのではなく奪うのが当たり前の信用できない者たちばかりだった。
ルイとダイ以外の護衛を雇いたくても、この国の冒険者は全く信用できず、雇い主を襲う可能性があるような冒険者ばかりだったのだ。
だから出来るだけ早くルイとダイにこの魔境町を離れて欲しくて、移動するように話をもっていくのであった。
ルイとダイにしても、最初に思っていたより大規模になってしまった食糧援助に驚いていたし、困ってもいたのだ。
そこでルイは一つの決断をした。
魔境の地下に村を作り、そこで老人や孤児たちが暮らせるようにしようとしたのだ。
魔境から入って直ぐの所に、十軒程度の小さな見せかけの村を作り、その地下に巨大なダンジョンを作って、今魔境町に集まっている老人や孤児たちが安全に暮らせるように考えたのだ。
土を圧縮強化して天井や壁を作り、そのままではルイが作ったと疑われるので、表面を長い年月で劣化したように細工し、古代の遺跡を発見したように思わせようとしたのだ。
老人や孤児たちを連れてバーベキューと狩りを行いつつ、同時に複数の魔法を併用して地下村の建造を行った。
中央に共用の通路があり、その左右に生活できる部屋を作ったのだ。
地下で火を使うと酸素がなくなってしまうので、壁の表面にヒカリゴケを生やせて、地上から光が入らなくても見えるように工夫した。
酸素が不足しないように、偽装のために地上村に大きな空気穴を設けるとともに、そこから魔物が入ってこないように、魔物除けの魔法陣を刻んだ。
水源を確保すると同時に空気が流れるように、地下水脈まで地下村を作り、地下の川の流れで空気を地上から取り入れられるようにした。
問題は、この国の冒険者や軍隊から老人や孤児たちを守る方法だったのだが、それは契約を交わしたメドゥーサに任せることにした。
そしてルイは僅か一日で地下村、いや、地下大都市を創り上げてしまったのだ!

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