大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第26話ミカサ公女の制裁

「それでどうなの?」
「ルイトポルト殿下を狙い、この国を通過しようとする魔族はことごとく討ち果たしております」
「一人たりとも討ち漏らしてないわね?」
「この国を迂回した魔族までは討ち取れませんが、そのような魔族はダイ様が全て討ち滅ぼしてくれています」
「そうね。ダイ殿なら大魔王であろうと討ち滅ぼしてくれるわね」
「公爵殿下と公女殿下を除けば、ダイ殿に勝てる者などこの世に存在しません」
「そんなことはないわよ。ベル王家の方々には敵わないわ」
「そうでございましょうか? 過去はともかく、今の公爵家の実力ならば、王家を凌いでいるのではありませんか?」
「あなたくらいの能力では、王家の本当の実力は分からないわね」
「王家の方々は、あれほどの魔力を感じさせながら、その上に能力を隠しておられるのですか?」
「そうよ。だから決して王家を敵に回すような事をしないように、公爵家の者たちに徹底しておいてね」
「承りました。それほど王家の方々がお強いのでしたら、エミネ王女の悪意など正面から討ち払い、エステ王国を併合なされればいいのではないのですか?」
「ベル王家の方々は代々お優しいのよ。でなければ、妖怪として忌み嫌われ国を追われ、刺客として雇われて王家の方々を襲った我らを許して下さった上に、公爵にまで取り立ててくれないわよ」
「分かりました。王家の方々のお優しさに救われた我々が、王家の方々のお優しさに不平不満を申すわけにはいきませんね」
「そう言う事よ。それで話は変わるけれど、エミネ王女の護衛についている魔族は減っているの」
「はい。度重なる失敗で多くの一族を失い、魔界の別の一族にルイトポルト殿下暗殺を依頼するほど困っております」
「だったらそろそろ制裁を加える時期ね」
「え~と、公女殿下。さきほど王家の方々のお優しさを尊重すると申されませんでしたか?」
「尊重するわよ。だからエミネ王女を殺したりはしないわよ」
「でも今制裁を加えると申されましたが?」
「私の愛するルイトポルト殿下を狙ったのよ。ただで済ますはずないじゃない」
「どうなされるのですか?」
「顔を潰してしまうのよ」
「それは! そのようなむごい事をすると、ルイトポルト殿下に嫌われてしまいませんか?」
「それは困るわね! でも本当に嫌われてしまうかしら?」
「今公女殿下が申されましたように、ベル王家の方々がお優しいのでしたら、女性の顔を潰したとなったら、お叱りを受けて嫌われると思うのですが」
「それは困るわね。だったらどうやって王女に思い知らせるのがいいと思う?」
「そうでございますね。天変地異を起こして民を困らせても、王家の方々に嫌われてしまうでしょうし、悪代官や暴虐な軍人に制裁を加えるくらいなら、王家の方々も不愉快に思われないと思います」
「でもそれでは、王女には何の制裁にもならないわよ」
「でしたら王女に仕える魔族を皆殺しにしてはどうでしょうか。魔族は王女に力を貸す見返りに、罪もない民を生贄にさせています。魔族を皆殺しにすることは、王女に恐怖を与えると同時に、エステ王国の民を助けることになりますので、ベル王家の方々に喜んでいただけると思います」
「そうね、それがいいわね! さっそく初めてちょうだい」
「承りました」

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