大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

第25話メドゥーサ

「わらわに何をさせるつもりだ?!」
「べつに何をさせるつもりもありませんよ」
「だったらなぜ殺しておいて生き返らせたのだ」
「殺したのは、私を殺そうとしたからです。生き返らせたのは、生まれたクリューサーオールとペーガソスが、あなたを殺した親の敵であるダイを母親と勘違いするのが可哀想だったからです」
「なるほど、わらわを生き返らせた理由は分かった。それで見返りは何を望むのだ」
「見返りですか? 何も考えていませんでしたし、別に何もいりませんよ」
「それではわらわの誇りが失われる! 我が一族の名誉にかけて、生き返らせてもらった礼をせねばならん。刺客として襲った相手に殺された上に、襲った相手に生き返らせてもらい、礼をしなかったなどと魔界で知られてしまったら、我が一族は魔界での貴族の地位を失ってしまう!」
「そう言う事でしたら、私たちを襲うのを止めてもらいたいです」
「それはもちろんだ。もともと他の一族からの願いを聞いて襲ったのだが、今考えれば我が一族を陥れようとした罠だったのかもしれない。だがそれでは礼にはならん。何か他にないのか?」
「そうですね。だったら私たちが保護している老人と孤児を護ってやってくれませんか?」
「老人と孤児を護れだと?」
「はい。この国は身分差別と種族差別が激しい上に、弱肉強食で老人や孤児が見殺しにされているのです。私たちはそれを見過ごせなくて、助けようとしているのですが、何時までもこの国に留まることができないのです」
「ふむ。身分差別や所属差別があるのは魔界と同じだし、弱肉強食は魔界の常識だから、この国がおかしいとは思わないが、恩は恩だし約束は約束だから、お達の言う通り老人と孤児を護ってやろうではないか」
「ありがとうございます。それでは護ってもらいたい老人と孤児たちを順番に魔境の外縁に連れてきますから、確認してください」
「魔境の外縁だと? 魔境の中に入ってこられないのか?!」
「魔境に入って来られるほど強ければ、何も貴方に保護を頼みませんよ」
「それもそうだな」
だがしかし、何度も何度も連れてこられる老人と孤児たちは、ルイとダイも驚いたのだが、最初に思っていた五百人の倍、千人を超えた大人数になっていた。
昨日のうわさを聞いた近隣の老人や孤児たちが続々と集まり、レイラも一食だけでもお腹一杯食事をさせてあげたいと思い、ルイとダイなら許してくれるだろうと連れてきてしまったのだ。
「どうする? 俺もここまで増えると思っていなかったから、約束を破ってくれてもいいぞ」
「騙された気もするが、わらわの命の対価が千の人間以下だと思われるは耐えられん! 千が二千、いや、万を超える人間であろうとも、わらわの命よりは安いものだ!」
「じゃあこの人たちを護ってやってくれ」
「分かった、約束しよう」
ルイとメドゥーサの間で契約が交わされたのだが、一つ大きな誤算があった。
それは生まれて最初に見た者を親だと思う生き物の習性だった。
知性のある魔族ではあるが、幼生ではなく成魔獣として生まれたクリューサーオールとペーガソスは、いくら教えてもダイを親だと思てしまうのだ。

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