第15話王女の苛立ち

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰」
「それはルイトポルトです」
「なんですって！？　アンネロッタ！　まだ殺せていないの！」
「申し訳ありません。強力な魔法使いが護衛についているようで、何度も何度も襲わせているのですが、未だ殺せません」
「だったらなんでそのことを報告しないの！」
「申し訳ありません」
「申し訳ありませんと言えばそれで済むと思っているの！　魔族なら魔族らしく人間を殺して見せない！　それが出来ないのなら、さっさと殺されてきなさい。そうしたら新しい魔族と契約できるじゃないの」
「分かりました。次は私直々に殺しに行きますが、そうすると王女殿下の護りがおろそかになり、ルイトポルトの反撃を許すことになりますが、それでも宜しいでしょうか」
「それを防ぐのもあなたの仕事でしょう。そう言う契約で毎日国民を生贄にしているのでしょ。生贄を受け取っておいて契約通りの仕事が出来ないなんて、なんて無能な魔族なんでしょう。私はなんて不幸なんでしょう。こんな無能な魔族と契約させられるなんて、魔神は他の神より力がないから、配下の魔族も無能なのかしら？」
「王女殿下！　私の事をとやかく言うのは契約を護れないので仕方がないが、魔神様を悪く言うようなら、いかに主人とは言え許さんぞ！」
「許さないのは私の方よ！　偉そうに文句を言うのなら、契約通り私を護りながらルイトポルトを殺して見せなさい。それができないと言うのなら、生贄として受け取った人間をよみがえらせなさい。私はよみがえった人間をもう一度生贄にして、もっと強い魔族と契約し直すわ！」
「く！　そこまで言いうのなら何が何でもルイトポルトを殺して見せる」
「そうよ、それでいいのよアンネロッタ。期待しているわよ。明日鏡に問い合わせたら、ちゃんとルイトポルトが殺されていて、私が世界で一番美しくなっているのよね」
魔族アンネロッタは、忌々しい心を押し殺し、王女の部屋を後にした。
「アンネロッタ様、王女を殺しますか？」
「ふん！　悪魔と契約するのにふさわしい汚い人間なのだから、あれくらい身勝手なのは当然だ」
「ならば余計な事を言う魔鏡を壊してしまいますか」
「今魔鏡を壊したら、私がやらせたとしか思われない。止めておけ」
「ならばどうされるのですか」
「毎日罪のない人間を百人生贄として手に入れられるのは大きい、王女は護らなければならないし、ルイトポルトも殺さなければならない。だから生贄を対価に他の魔族にルイトポルト殺しを依頼する」
「他の魔族に頼むのは恥でございます」
「分かっている。だがこれ以上我が一族が殺されてしまうと、魔界での力が弱まり、他の魔族に領地を奪われてしまうかもしれぬ」
「確かにその恐れはございますな」
「他の魔族がルイトポルト殺してくれてもよし、返り討ちに合って魔界の戦力を失ってもよしじゃ」
「なるほど、それは名案でございますな」
「適当な魔族を選んでくれ」
「承りました」