「異世界動画で億万長者・ドローンの御蔭で助かっています」(神隠しで異世界に迷い込んだ人間不信の僕は、又従姉の助けを受けて異世界で生き残ろうと必死です)

克全

第90話先行試作硬貨

「姉さん、とりあえず先行試作の100銭硬貨が欲しいのですが?」

「分かったわ、地金を売却して手に入れた利益に多少資金を追加して、1500万円分を先行試作してもらうわ、バッハ聖教皇家に対する見せ金にするんだよね?」

「はい、軍事力は皆無ですが、一応のそれなりの権威を残しています。この国で正式な貨幣鋳造を行ったのはバッハ聖教皇家だけですから、僕が貨幣鋳造の許可を願い出たら、貨幣鋳造権はバッハ聖教皇家だけにあると言う権威を確定出来る可能性があります」

「そうね、貨幣鋳造は国の専権事項だから、アショフ武王家も貨幣鋳造権が有ると言いだすかもしれないわね。でも今まで1度も貨幣を鋳造せず、海外から輸入していたと言う事だから、一朗君の武力で押し通せる可能性は高いわね」

「はい、ですから毎日地金を送った分で100銭硬貨を鋳造して既成事実化したいのです」

「そうね、それにさっきも言ったけど、1000万枚も異世界の銭をこちらで売っているから、金の買い占めと合わせて、異世界の貨幣不足が深刻かもしれないわね」

「僕の周りは物が溢れていますし、銭も金も莫大な量が流れ込んでいますから、他の地方の事は見落としてしまっているかもしれません」

「調べられるのなら、可及的速(かきゅうてきすみ)やかに人を送って事実確認して欲しいわ」

「分かりました、出来るだけ早く正確な情報を集めてもらいます。ところで江戸幕府が最初に発行した1文銭は何枚だったのですか?」

「ネットを調べれば分かると思うけど、江戸幕府が最初に発行したと言われる銭には色々な説があるわ」

「え? どう言う事ですか?」

「一般的には寛永通宝の4文銭と1文銭が最初と思われてるけど、慶長通宝と言われる銅貨が鋳造された記録が有るの。もっとも江戸幕府が鋳造発行したのか、私鋳銭として堺の商人が鋳造したのかは色々な説があるわ。それに豊臣秀吉か豊臣秀次が、文禄通宝と呼ばれる銀銭と銅銭を鋳造発行したと言う説もあるわ」

「そうなんですか、それは全然知りませんでした、でもそれって僕が鋳造発行を依頼する銭の発行額の参考にはなりませんよね?」

「ごめんそうだったね、好きな話だからつい不必要な話までしちゃたわ」

「いえ、それはいいんですけど、僕の知ってる範囲では、あの頃の金銀銅貨の交換基準は金1両=永楽銭1貫文=京銭4貫文=銀50目でしたよね」

「そうよ、たださっき言ったように、一朗君が金を買い占めているのと銭を転売している事を考えて、100文銭を流通させないといけないわ。でも1636年から鋳造された古寛永銭の初期鋳造額は分からないの、それに30年ほどかけて鋳造された古寛永の総鋳造高についても詳しい記録がなく不明なんだけど、鋳銭目標などから推定した数値では325万貫文(32億5千万枚)と言われるわ」

「100銭硬貨を投入すると、金銀銅の両替や交換手数料が不要になりますし、金貨銅貨不足を解決できるのではないですか」

「そうね、詳しいことはもっと調べてからでないと分からないけど、いずれは投入するのだから、前もって3000万枚は鋳造しても大丈夫よ」

「1500万で鋳造できるのは300万枚ですよね、ぼろ儲け出来てしまいますね」

「異世界での投入は本当に気をつけてね、海外の硬貨鋳造技術が正確にわからないから、100銭硬貨の価値を読み違えると、偽硬貨が大量に流れ込むことになるわ」

「気をつけます!」

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