第86話迎撃成功

結論から言えば、ドローンによる迎撃は見事に成功した。この世界には強力で凶暴な獣や魔獣が数多くいるが、何故か空を飛ぶ凶暴な魔獣は存在しないようだ。御蔭で対空武器・対空防具・対空戦闘は進歩しておらず、ドローンの攻撃に狼狽し右往左往していた。

まして魔導書や魔道具による即死・麻痺・睡魔の反復攻撃を背後上空から受けると、ブロンテ軍は抵抗も対抗も出来ずに逃げ惑う事になる。

そこに城内からアーデルハイト率いる精強な籠城部隊が反撃に出たからたまらない、麻痺と睡魔で動けなくなったブロンテ兵は容易く殺されることになった。しかも即効魔法に抵抗したブロンテ兵も、ドローンからの防御力低下魔法の影響は受けている者が多く、ドローンから防御力上昇魔法の支援を受けたアーデルハイト部隊と戦うのは圧倒的に不利だった。

アバーテ城を包囲するブロンテ軍はズタズタに寸断され、生き残った部隊もドローンに背後から攻撃され、混乱するところをアーデルハイトに強襲される。逃げ出した部隊も、満月期の為に逃走路は１カ所しかなく、そこにはドローン部隊が２４時間滞空待ち伏せをしていた。

無理をすれば満月期であっても、ドローンに兵を乗せてローゼンミュラー本領からアバーテ領に援軍を送り込むことは出来たが、この手は最後の切り札なので、今回は遠隔操縦による奇襲攻撃だけで支援した。

最終的に生き残って降伏したブロンテ兵や、麻痺や睡魔で身動きできなくなっていたブロンテ兵を捕虜とし、アバーテ城の牢屋に押し込めることになった。総勢６０００兵の内３０００兵は死傷により商品価値はなくなったが、３０００兵は奴隷として売り払うか捕虜として身代金を取る事が出来る。ブロンテ伯爵本人と一門衆や有力家臣など、大金に化ける人質も多く、ローゼンミュラー家には美味しい臨時収入となった。

いや人間だけではない、身代金が払える者以外の武具防具は鹵獲品として手に入り、家臣に褒美として与えることも新兵に貸し与える事も出来る。いや、中古品として売り払い軍資金にする事も出来る。

新月期となり、ブロンテ伯爵家軍やミヒャルケ侯爵家軍の第２陣が来ない事を確認し、サートウ軍とローゼンミュラー本領軍が山を下りアバーテ地区に進軍、奴隷として働かせる者と人質として確保する者をサートウ領まで移動させた。

捕虜の中にはサートウ家やローゼンミュラー家に寝返り仕官を求める者がいたたため、彼らも人柄と戦闘力を確認するためにサートウ領に移動させた。

アバーテ地区に残った兵力は２０００兵と倍増したが、ブロンテ軍寝返り組を戦力かする事が出来れば、サートウ領・ローゼンミュラー本領も２０００兵の戦力を増強することができる。まして今回の戦勝により、今まで以上に両家に仕官したがる者が増えるから、スパイのリスクを受け入れるなら大幅な戦力増強が可能となった。