「異世界動画で億万長者・ドローンの御蔭で助かっています」(神隠しで異世界に迷い込んだ人間不信の僕は、又従姉の助けを受けて異世界で生き残ろうと必死です)

克全

第78話姉さんからの指示

俺の側室問題で詰め寄って来る寝室付き獣人家事奴隷(メイド)だったが、姉さんからの緊急連絡の警報音が鳴り、我に戻って詫びを言って部屋を出て行った。

「商品送る、鉱山開発を望む」

姉さんからのメールは、非常に短く簡単明瞭なものだったから、スマホを使って直接声で確認することにした。姉さんが拉致監禁され、人質にされる可能性も真剣に考慮していたので、音声・画像・チャットの3つ同時に起動しない限り信用しないと言う約束を交わしていたのだ。

もちろん何の行動も伴わない気楽な会話は別だが、今回のメールは明らかに今までとは違う、異世界を開発すると言う国家や大企業レベルの命令だから、しっかりと確認しないといけない。

「本気ですか? どういうことですか?」

「一朗君の会社に貴金属販売部門を設立する心算なのだけれど、原材料になる貴金属は異世界で鉱山開発して運んで貰う必要があるの」

俺はモニターに移る姉さんの姿・音声・チャットに打ちこまれる文字と画面に違和感がないか、姉さんが強制されていないかを見極めようと集中したが、どうやらその心配はないようだった。だが問題は必要があるのと言う言い回しだ。

「でも姉さん、会社を大きくする必要がありますか? 今まで日本に運び出した金の量だけで、働かなくても十分豊かに暮らしていけますよ?」

「必要なのよ」

何も理由を言わずにただ必要と言う場合は国が関与している時の隠語だ!

今回金を必要としているのは日本政府だが、理由は何だろう?

「理由は話せますか?」

「私たちで日本政府を側面支援するのよ」

姉さんが話した理由は以下の問題だった。


「各国の外貨準備高(1997年12月現在/単位:100万米ドル)」
国名  :合計金額   :金での準備高:その内の外国為替:その他  :金の割合

フランス: 55,929:25,002: 27,097: 3,830:45%
イタリア: 77,545:21,806: 55,431:   308:28%
米 国 : 69,960:11,050: 30,810:28,100:16%
イギリス: 38,250: 4,810: 30,800: 2,640:13%
ドイツ : 85,349: 7,762: 69,853: 7,734: 9%
カナダ : 17,969:   146: 15,122: 2,701: 1%
日 本 :220,792: 1,144:207,866:11,782: 1%

敗戦国である日本は、金の保有量を国際的に制限されてきたのだ。知っている人は少ないかもしれないが、1975年の第1回サミットに先だって行われた10カ国蔵相会議で、当時の大平大蔵大臣は「日本は現在保有している金の総量を一切増加させない」と同意させられた。さらに、1985年のプラザ会議でも「日本の金準備は外貨準備の1%に凍結する」と決定さられたのだ。

その時日本が保有していた金は756トンなのだが、これは政府が公表している表向きの数字だ。時価に換算すると2・2兆円分しかなく、しかもその金塊はほとんど日本にない。日銀の金庫には保管されておらず、アメリカ・ケンタッキー州・フォートノックスにあるFRBの地下金庫で保管されている。そこには日本だけでなく、世界中から集められてきた金塊が保管されている。

それはIMFや世界銀行が発展途上国(属国)から担保や準備金として集めてきた金塊だ。金取引の際には、その国のブロックにある金塊を台車に乗せて取引先の国のブロックへ移動させるだけなのだ。勿論、何かあればすぐに没収できるわけだから、担保として取られている状態なのだ。

それ以後も日本の公的な金保有量は増えておらず、2012年度の資料でも以下の通りだ。

金の保有量 国別ランキング(2012年)
【ワールド・ゴールド・カウンシル 】世界ランキング統計局出典

01:アメリカ      8,133.5  75.1 %
02:ドイツ       3,395.5  71.9 %
03:IMF(国際通貨基金) 2,814.0
04:イタリア      2,451.8  71.3 %
05:フランス      2,435.4  71.6 %
06:中国        1,054.1  1.6 %
07:スイス       1,040.1  14.2 %
08:ロシア        918.0  9.2 %
09:日本         765.2  3.1 %
10:オランダ       612.5  60.2 %

だが民間の金保有量には制限はなく、特に東京など大都市に「都市鉱山」と言われる貴金属が廃棄物として大量に存在する。こうした資源を金銀銅として有効に活用することができれば、日本が課せられている敗戦国としての不利を覆すことが可能だ。

計算上では日本の都市鉱山には約6800トンの金・6万トンの銀・3800万トンの銅が眠っているそうで、全世界の埋蔵量との比較では金は16.4%、銀は22.4%、銅は8.1%にも達していると言う

だが都市鉱山に眠る鉱物資源を回収するには多額の費用が必要になる、現実にこの資源を利用することはそう簡単でないだろう。だから日本政府は、合法的に民間で商業用として金銀を保有させるべく動き出したのだろう。

しかも俺と龍子姉さんを利用すれば、僅かな商品を異世界に輸出することで、莫大な量の金銀財宝を手に入れる事が出来るのだ。

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