「異世界動画で億万長者・ドローンの御蔭で助かっています」(神隠しで異世界に迷い込んだ人間不信の僕は、又従姉の助けを受けて異世界で生き残ろうと必死です)

克全

第45話龍子姉さん視点

「バルバラ殿、この地の領主について教えてくれ」

「はい、古くはバッハ聖教皇家に仕える騎士家だったのですが、長年の戦乱を生き残るのに有力貴族の間を渡り歩いていました」

「今はどの家との繋がりが強かったのです?」

「建前上はアショフ武王家に仕える準男爵家なのですが、ミヒャルケ侯爵家とハナセ伯爵家を天秤にかけていました」

「アショフ武王家もボーデヴィヒ公爵家の傀儡(かいらい)なのでしたね?」

「はい、ですがボーデヴィヒ公爵家も跡目争いがあり、公爵の正統を名乗る幾つかの勢力に分かれてしまっています」

「そうですか、ならここは金の力で一点突破を図(はか)ります」

「どう言う事ですか?」

私が忙し時間を調整してチャットに参加したのは、ミヒャルケ侯爵軍が撤退した直後だった。そこでバルバラに色々と状況を聞きだしていたのだが、聞いた事を考慮(こうりょ)して決断した作戦は、金の力で一点突破をする方法だった。

一朗君が人質になっているので、私の方が圧倒的に不利なのだが、私には相手に不利をさとられない力がある。司法研修生時代のわずかな時間だが、示談や裁判などの交渉ではポーカーフェイスで評判だった。

それにローゼンミュラー姉妹は、私たちと交易を繰り返すことで、莫大な利益を得られること経験してしまった。戦国乱世を生きる姉妹は、些細(ささい)な利益の為に親兄弟を殺す現実を嫌というほど見続けている。私が一朗君を見捨てる可能性を恐れ、交易を重ねる度に弱気になっている。

しかしそれは当然だろう、徐々に弱体化し、他家に膝を屈して家臣になるか攻め滅ぼされるかの瀬戸際(せとぎわ)だったのだ。それが交易で利益を上げ、姉妹から見たら魔道具に見えるドローンやスマホを駆使することで、有力貴族の軍を撃退できたのだから。

だから私が提案の形を借りて命令したのは、バッハ聖教皇家とアショフ武王家の名前を利用してオークションを開催する事と、ミヒャルケ侯爵軍が撤退した準男爵領を占領する事だった。

今姉妹が指揮下に置いている軍勢は900弱はいるだろう。本領の守備に200兵を残すとして、700兵を自由に動かすことが可能だ。いや、今回の勝ち戦を考えれば、もっと兵力を集める事ができるだろう。

「この勝ち戦に乗じて、傭兵を再度集めて下さい。そして働きによったら、男爵家の騎士として召し抱えると宣言しなさい」

「男爵家ですか? 我が家は準男爵家ですが?」

「次の献金で男爵位を得る事が内定していましたね、少々早いですがそれくらいのハッタリは許されるのではありませんか?」

「ですが今は現金がありません」

「一朗君から借りればいいのです、その代わり一朗君にも必ず準男爵位を手に入れるのですよ。それとこの地を占領して、もう1つ準男爵位を手に入れなさい」

「! 分かりました、直ぐに城攻めの準備をします」

「今後の方針は城を攻める準備の間に話しましょう」

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