王子様探偵と妖狸町中華とダンスィ

克全

第19話誘拐19

今日も誘拐犯達は身代金受け渡し場所を転々と変更した。
小説やテレビドラマで使われたアイデアを真似ているように見せている。
絶対そうではないと言い切れないが、恐らく弁慶の考えが正解なのだろう。
疑わしい刑事の挙動が不審だ。
その刑事は牛島という名前らしい。

腹の調子が悪いと、何度もトイレに行く。
その度に誘拐犯と連絡を取っているのだろう。
だがその会話内容は、防衛駐在官と専門調査員が盗聴してくれている。
父王陛下が俺のために付けてくれた人員は、専門以上の能力がある。
アメリカ軍やCIAにも引けを取らないと思う。

誘拐がここを襲撃をしてくるのは、弁慶の予想通り深夜になるだろう。
何度も五億円移動させるのは危険だと牛島が言ったらしい。
確かに山田さんが用意した五億円は、下手に移動させたら危険だ。
警察が預かって移動させている間に奪われたら、警察の大失態になる。
山田さん宅で奪われるのも失態には違いないが、管理しているのは建前上山田さん自身だ。

誘拐犯と対峙する警察には、じりじりとした時間だろう。
山田さんは五億円分は緊張しているが、命や名誉がかかっている訳ではない。
俺達は夜に襲撃があると予想しているので、普段と同じ警戒レベルだ。
問題は動画の配信元の追跡調査だ。
専門調査員達が総力を挙げて配信元を特定しようとしてくれている。

誘拐犯を返り討ちする事も、撃退する事も難しくはない。
態と十億を奪させておいて、追跡する事も簡単だ。
だが誘拐犯が逃げた先に、幸次君が無事にいるとは限らない。
全く関係のない所に監禁されてる可能性もある。
一番確実なのは、動画配信された場所を特定する事だ。

日本の警察は、全力を挙げて配信元を特定しようとしていると思う。
しかしながら、縦割り行政と揶揄される日本では、最高の人間が担当しているとは思えない。
それに比べたら、最高の人間が動員されている俺の方が確かだろう。
弁慶の話では、本国の人間まで動員してくれているという話だ。

「山田さん。
申し訳ありませんが、さっきの話通り、部屋を貸してもらいます」

「ええ、どうぞ。
何の遠慮もいりません。
息子の部屋を使ってください」

「ありがとうございます。
寝袋を持参しましたので、部屋を汚すことはないと思います」

「そんな遠慮はいりませんよ。
気にせず息子のベットを使ってください」

山田さんはそう言ってくれるが、おっさんの体臭を子供さんのベットや布団に付けるわけにはいかない。
何より今晩は大勝負だ!

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