王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第73話ドワフランド王国

「どうでしょうか、アーサー様」
「ルトムント陛下の提案はありがたいが、いきなり公爵を名乗るのは気が引ける」
「しかしながら、アーサー様の武勇と人望は、王を名乗られてもおかしくないと、我が王は申しております」
「今度は王ですか。買いかぶり過ぎです」
「いえいえ、我が王は、アーサー様なら王を名乗られて当然ではあるが、近隣諸国への影響を考え、公爵を名のなれる方がいいと提案しております」
「爵位をどうするかはともかく、ルトムント陛下は私の独立を承認してくださるのですね」
「もちろんでございます。その上で交易の諸条約を結びたいとのことでございます」
「ルトムント陛下の意向は理解しました。家臣達と話し合いたいので、しばらく別室で待っていてください」
「はい。よき返事を期待しております」
さて、ドワフランド王国の本音は分かっている。
俺を独立した国王と認め、独立国と対等公平な条約を結び、それをテコにネッツェ王国との不平等条約を改正したいのだろう。
いや、ネッツェ王国とドワフランド王国との国境線は、一割は占領した。
しかも俺が主要街道を整備したから、ネッツェ王国と国交断行しても大丈夫な状態になっている。
この状態なら、俺とネッツェ王国とを天秤にかけて、有利な条件を出す方と交易することも可能だ。
まあ俺にしたら、無理して不利な条件で交易する必要などない。
新たにネッツェ王国とイマーン王国の広大な領土を切り取った事で、将来の自給自足が見えてきた。
侵攻時に多くの寒村が版図に加わった。
貧しいイマーン王国民は、喜んで俺の国に併合された。
ネッツェ王国の民は、奴隷などの虐げられていた人や、貧しい人達が歓迎した。
貴族や士族、豊かな人は併合に反感を持った。
そこで自由に逃げる事を許した。
奴隷を連れていくことだけは許さなかったが、持ち運べる財産は自由に持ち出しを許した。
中には戦いを挑んできた貴族士族もいたが、麻痺と睡眠の魔法で無力化した。
まあこの辺は予定通りなのだが、問題は爵位だ。
俺の予定では、最初は独立した伯爵を自称し、ゴールウェイ伯国を建国する心算だった。
その上でネッツェ王国やイマーン王国と戦いつつ、徐々に交渉して侯国や公国にランクアップする心算だったのだ。
だがドワフランド王国が俺を独立した公爵として認め、王を名乗ったとしても正式な国交を承認すると言うのなら、これは好機だ。
ここで伯爵を名乗ってしまったら、そこから侯爵や公爵に名乗りを替えるのは大変だ。
少々の抵抗は無視して、王を名乗ろう。
偽王や僭王と罵られるだろうが、長年に渡り領地を維持すれば、いずれそれも静まるだろう。
だが問題はアリステラ王国だ。
母国であるアリステラ王国が、俺の建国宣言と王位を認めてくれるかどうかが分からない。
民を飢えさせないためには、これからもアリステラ王国の魔境で狩りを続けなければならない。
領地の土地を豊かな農地に変えるには、魔境の腐葉土を埋め込み続ける必要がある。
出来るだけ早く父王陛下に会って、どの爵位なら独立を承認してくれるか、本音で話し合う必要がある。

「王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く