王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第71話四輪作法

「まずは八つの外城を四つに分けて、それぞれ植える物を変えよう」
「はい。具体的にどうすればよろしいですか?」
俺は農業担当の近習に指示を出した。
いずれは家畜の糞が良質な肥料になるし、人糞も肥料に出来るだろう。
だが今は、イマーン王国のやせた貧しい大地に、魔境の腐葉土を加えて撹拌しただけの状態だ。
この状態で収穫が期待できる作物には限りがある。
ダラム城とアルタス城の外城に関しては、家畜の糞が加わっているから、失敗も覚悟してライ麦を植えるのも一つの手だろう。
一年目:夏に穀物(大麦、燕麦、豆など夏に育つ)を植える。
二年目:クローバー・ウマゴヤシなど地力を回復させる牧草を植える。
三年目:冬から春に穀物(小麦・ライ麦などの冬に育つ)を植える。
四年目:夏から秋に根菜(カブ、てんさい、ジャガイモなど夏に育つ)を植える。
こうすれば、やせた土地でも一年間休ませる事なく、作物を作ることが出来る。
同じ年の春と秋に収穫できるような、豊かな大地ならいいのだが、生憎俺が手入れた土地では無理だ。
一年目に大量の魔境産腐葉土を鋤き込まなければならない。
大地を深さ一メートルくらい掘り返し、腐葉土とよく混ぜなければいけない。
これは俺の魔法でやる。
だが二年目以降が大変だ。
蕪などを植えた場合、俺が手助けしてやれない、作物を植えた後に行う、畝の間を耕す必要があるのだ。
永遠に俺が魔法で耕してやれるわけではない。
出来るだけ早く、馬や牛を使って大地を耕す体制を作らなければいけない。
この領地はアリステラ王国とは違って、一人の人間が一年間食べる量の食糧を生産するには、十三反(三千九百坪)の土地が必要なのだ。
五人家族が一年間生きていくには、六十五反(一万九千五百坪)の土地が必要になる。
だが、俺の領地は狭く限られている。
特に安全が確保されている城内など狭いものだ。
隣国との休戦協定が結ばれるまでは、迂闊に領民や奴隷を城外に出せない。
その限られた土地で、十二万にも増加した奴隷を食わしていかなければいけない。
だが逆に見れば、反別当たりに投入できる労働力が増えたともいえる。
だから痩せて貧しい広い土地から収穫を得る農業ではなく、豊かだが狭い大地から収穫する農業に変えていくことにした。
人糞や家畜の糞を数年間発酵させて、肥料にする為の堆肥場を作る。
俗にいう肥溜めだ。
今迄ならできなかった、畝を作った効率的な種まきや苗植え、小まめな雑草取りも奴隷労働力で可能になっている。
いや、奴隷労働を活用する方法を確立しなければ、俺が死んだ後には、奴隷が餓死する未来しかなくなる。
冷害や日照りなどの自然災害が襲ってきたとしても、領民が餓死しない適正な数値を確かめなければならない。
適正な領民の人数。
農民一人当たりの適正な大地の広さ。
一反当たりに必要な肥料の量。
一戸の農家や、組合を作った農家が、土地を何カ所に区分けし、どのような順番で作物を作れば一番効率がいいのかを確かめなければいけない。
出来る事なら、一年間に二度の収穫をしても、土地が痩せない方法を見つけ出したいのだ!

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