王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第49話援軍2

「麻痺」
俺はネッツェ王国に略奪に入ろうとした村人を麻痺させた。
イマーン王国の貧民が、飢えを耐えかねて、命懸けで国境を越え、ネッツェ王国の村を襲おうとしたのだ。
一人の兵士に率いられているが、武器はよくて斧、悪ければ手製の木槍だ。
村で待つ女子供に、少しでも食料を持ち帰りたいのだろう。
だが略奪は許されない。
村に火を放ち、殺人を犯して他人の物を奪うなど、絶対に許されない。
イマーン王国にどのような事情があろうと、見過ごすことは出来ない。
ネッツェ王国に入り込む前に取り押さえなければならない。
俺は守備範囲を広げた。
いや、広げさせられた。
ただしイマーン王国に入り込んだ場所だけだ。
つまり、ネッツェ王国イブラヒム王家は、これ以上自国内の土地をアッバース首長家に与える気はないのだ。
他の貴族家や士族家も、全く何の旨味のない戦争に、これ以上戦力や物資を投入する気がないのだ。
だからやる気の見せる俺に、イマーン王国切り取り自由の権利を与えた。
俺に攻勢防御をさせることで、ネッツェ王国内で戦わなくするためだ。
イブラヒム王家も貴族士族家も、出来るだけ早く、増援に派遣した国境警備部隊を引き上げさせたいのだ。
だがこれは俺には好都合だった。
大手を振ってアリステラ王国から戦力を補充できた。
だがここで一つも問題があった。
新たな捕虜をどうするかという事だ。
最初の村人は何の罪も犯していなかったから、アリステラ王国で送ることが出来た。
だがその後に麻痺魔法を使って制圧した村人は、罪を犯していた。
他国に入り込み、他人を傷つけ殺した者を、何の罰も与えず放免するわけにはいかない。
そんな事をすれば、殺された人間の命を蔑ろにすることになる。
だがネッツェ王国に引き渡すのも嫌だった。
見せしめとして、どれほど過酷な罰を与えるか想像もつかない。
だが幸いなことに、戦争捕虜が捕獲者の財産になる事は万国共通なので、俺のモノとして扱えた。
王侯貴族士族に関しては、その身分に応じた待遇を与え、身代金を請求することが出来る。
身代金を払えない者に関しては、俺の奴隷にすることに出来た。
だから全員奴隷にした。
だが奴隷にした者たちは、心から喜んでいた。
命懸けで戦うことなく、毎日二回の食事が支給されたからだ。
しかもその食事内容は、略奪を始める前より美味しく量も多いのだから、文句など出るはずがなかった。
俺からすれば、魔法袋の肥やしになっている銅級と鉄級も不人気食材を放出して、魔法袋の整理整頓をしているに過ぎない。
だが援軍と捕虜が想定より早く増えてしまったので、ネッツェ王国内にある最初の砦・ラボック砦と、イマーン王国内に最初に築いた城・ダラム城を拡張しなければいけなくなった。
だからここで、将来を見据えた布石を打つことにした。
それをイブラヒム王家とアッバース首長家が認めるかどうか、賭けでもあった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品