王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第40話ネッツェ王国再び

「殿下、本当によかったのですか」
「爺の事か」
「はい。いくら王都の屋敷が大切だからとは言っても、ウィンギス男爵を残すのは危険ではありませんか」
「パトリック達がいてくれるではないか」
「私達を信じて下さるのは嬉しいですが、まだまだウィンギス男爵には及びません」
「正直だな」
「私達はそれほど傲慢ではありません。ウィンギス男爵の実力がどれほど凄いかは、訓練して頂いている私達が誰より知っています」
「確かに爺の実力は凄い。身辺を護ってもらうのなら、爺が一番強力だろう。だがな、爺は有名過ぎるのだ」
「確かにウィンギス男爵は勇名をはせておられましたが、今では殿下の傅役として冒険者を引退しておられます」
「それが問題なのだよ。分かるだろ」
「あ、そうですね。ウィンギス男爵が王家王国で爵位を賜り、殿下の傅役となられたことは、冒険者の立身出世話として有名でした」
「万が一ネッツェ王国に爺の顔を知っている者がいたら、私が王子だという事が露見してしまう。そうなると、イブラヒム王家は勿論、アッバース首長家も私の首を狙ってくるかもしれない。いや、首を狙ってくれるならまだいい。私を取り込んで、アリステラ王国内に内乱を起こそうと接触してきたときが困るのだ」
「そうでございますね。殿下がいくら否定されても、その機会を好機と捉えて、殿下に謀叛の冤罪を着せようとする者が現れますね」
「その通りだ。だから今回のネッツェ王国入りは、顔の知られていない者でないといけないのだ」
「私達なら大丈夫と言う事ですな」
「私の近習衆は、対外的に顔を知られていないからな」
「確かに殿下の継承順位は、諸外国が密偵を放つ順位ではありません。まして殿下の近習である我々に、密偵を送り込む可能性などありませんね」
「そう言う事だ。ただ気を抜くなよ。ここから先は、殿下ではなくアーサーと呼ぶのだぞ」
「はい。アーサー殿」
俺達は色々話し合い、ネッツェ王国に同行してもらう人選を行った。
爺は素直に王都に残ってくれた。
自分が有名で、俺の正体を露見させる可能性があると自覚していたのだろう。
その代わり、俺と一緒にネッツェ王国に行く家臣の人選には、それは厳しい目を向けた。
近習衆の中でも、実力と忠誠心に抜きんだ者を選抜してくれた。
同時に冒険者組合にも、爺の名で依頼をかけてくれた。
戦闘力と人格に優れた冒険者を、ネッツェ王国で士爵位を目指す騎士家八男の護衛兵として集めてくれた。
異国で爵位を目指すのだがら、当然大きな戦争に参加する事は、事前にしっかりと説明してくれている。
十分時間をかけて、王家王国内のある各地の冒険者組合から百人を集め、准男爵家に匹敵する戦力を整えて国境に向かった。

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