王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第34話アゼス魔境探査6

「そのまま待機していろ!」
馬鹿な近習の一人が、敵がいなくなったと勘違いして円形陣を崩そうとしたので、厳しく叱責した。
確かに今、目に見える所に戦える魔獣はいないように見えるが、麻痺しているビッグウルフと眠っているビッグウルフは、いつ回復するか分からないのだ。
堅固に円形陣を保ってくれていれば、最初の一撃は耐えることができるだろうし、ビッグウルフも攻撃を躊躇してくれるかもしれない。
その僅かな時間が、俺が近習衆を助けに入る時間を稼いでくれる。
だがいくら円形陣を組んでいても、一人でも油断していれば、そこを突くくらいの知性はビッグウルフにはあるのだ。
「余が止めを刺すから、不意討ちに備えていろ。愚か者が!」
ブラッディウルフが相手なら、四人一組の近習衆だったら、止めを刺す経験をさせてやる余裕はあったが、ビッグウルフが相手だとそうはいかない。
近習衆の殺気に反応して、麻痺や眠りの魔法を解除する可能性があるのだ。
しかも今回の相手は、見た目がビックウルフでも実力がキングウルフの可能性がある。
とてもではないが、近習衆に任せられる相手ではないのだ。
何事もなく十三頭のビッグウルフに止めを刺し、魔法袋に収納することが出来た。
合計で十六頭のビックウルフを手に入れることが出来た。
もし猟師が一人でこれだけの成果を手に入れたとしたら、猟師を引退して一生安楽に暮らすことが出来ただろう。
俺としても、ビッグウルフの革を使ったハードレザーアーマーを十六着も創り出すことが出来るし、ビッグウルフの牙と爪を使った魔槍と魔剣を、それぞれ十六振り創り出すことが出来る。
それだけの装備を貸与する条件を示すことが出来たら、金級から白金級の騎士が多数仕官を望んでやってくるだろう。
「このまま撤退するぞ」
「「「「「は!」」」」」
急いで魔境の外に出ようとした俺達の前に、事もあろうに二足歩行地竜が一頭現れた!
「御前達はこのまま逃げろ」
「そんな」
「殿下を置いて逃げる事などできません」
「そうです。そんな事は出来ません」
「足手纏いなのだ」
「自分達でも時間稼ぎくらいは出来ます」
「そうです」
「我々が時間を稼ぎますから、殿下はの間に御逃げ下さい」
「勘違いするな! 本当に足手纏いなのだ」
「そんな」
「それはあまりな御言葉でございます」
「いいかよく聞け。今から爺直伝の秘儀を使う」
「「「「「は!」」」」」
「これは例え味方であろうと見せる事が出来ない余の秘儀なのだ」
「「「「「殿下!」」」」」
「これを見られたら、それが御前達であろうと殺さねばならん」
「「「「「は!」」」」」
「爺の下で鍛錬した御前達なら分かるであろう」
「急いで逃げるぞ」
「「「「「な?!」」」」」
「殿下の足手纏いになるわけにはいかん。急げ!」
「「「「「は!」」」」」
やれやれ、やっと自由になれた。
これで思う存分狩ることが出来る!

「王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く