王家を追放されたわけじゃないけど、世直しすることにしました。

克全

第33話アゼス魔境探査5

長巻の柄をビッグウルフの口に押し当て、牙の攻撃を喉の前で受け止める!
一瞬キングベアの革で創られた、ハードレザーアーマー左前腕を噛ませて、右手を大刀に持ち替えて攻撃しようとも考えたのだが、いくらリントヴルムの鱗を縫い込んでいても、牙の鋭さは防げても、強靭な顎の圧力には抗しきれないと判断した。
喰い千切られることはないだろうが、骨まで圧し潰されると判断したのだ。
そこで両手で持った長巻の柄をビッグウルフの口に押し当て、鍛え抜いた体術でビッグウルフの勢いを利用して左横に放り投げた。
再度ビッグウルフが攻撃をしかけて来るまでの僅かな時間に、此方も足捌きで体勢を整え、寸毫の隙もない構えで迎え撃つことが出来た。
ビッグウルフが逃げていたら、追撃する事はなかっただろう。
それよりも麻痺させたり眠らせたりしたビッグウルフに、止めを刺すことを優先しただろう。
そのことが分かっていたから、仲間を助けるために僅かな確率に賭けて攻撃してきたのか、それとも勝てると勘違いしていたのか、三頭目は今一度喉を狙って攻撃をしかけてきた。
足捌きを駆使して左に移動し、長巻を下から跳ね上げて、一撃でビッグウルフの首を刎ねる心算だったのだが、ビッグウルフも優れた瞬発力を駆使して俺の動きに追随してきた!
離れて少しづつ俺に傷を与えるのではなく、一気に仕留める攻撃だ。
ビッグウルフが低い体勢のまま、右腕を狙ってくる。
あの体勢だと、此方が攻撃してももう一度追随してくるだろう。
だが攻撃も防御もしなければ、喉を喰い破られてしまう。
再度振り回す余力を残しつつ、石突で刺突する!
案の定ビッグウルフが俺の刺突を余裕を持って避ける。
だがこちらも、ビッグウルフが左に抜けるように、わざと隙を作り斬り返すことを想定して刺突をしたのだ。
刺突の速度を遥かに超える、加速をつけた斬り返しをビッグウルフの首に叩きつける。
何の抵抗もなく首が跳ね飛ぶ。
日頃の鍛錬が役立った。
普通の戦いでは、敵と刀を交えることなどほとんどない。
生死の境は一瞬で、敵の刃が己を斬る前に敵を斬るか、それとも自分の刃が敵に届く前に自分が斬られるかのどちらかだ。
だから普通の鍛錬では、相手の剣より一瞬でも早く斬ることを主眼に置く。
同時に敵の攻撃が届かないように身体を捌くことを鍛錬する。
敵が攻撃できないように動きまわり、更には敵が攻撃も防御も出来ないように崩すことが大切だ。
出来る限り少しの動きで相手を翻弄し、崩して反撃できないようにしてから攻撃するのが理想だ。
その鍛錬を重ねた先に、敵の攻撃を受けてから身体を捌き、反撃を受けない体勢になってから相手を攻撃する。
今回はそれが上手くいった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品