公爵令嬢が婚約破棄され、弟の天才魔導師が激怒した。

克全

第43話

ルークと私はドレスガン王国にやってきました。
ドレスガン王国は、以前揉めたベネット王国の更に北に位置する強国です。
三百年を誇る歴史と、強力な軍隊を擁する大国なのです。
その名門大国が、前回の揉め事で、ベネット王国に侵攻するなとルークに脅かされたのです。
とても屈辱的な出来事だったと思います。
それが今回の遠因になっていたのかもしれません。

「僕、怒ったからね!
お姉ちゃんの言う事を聞かなかった。
お姉ちゃんを軽く扱った事、絶対に許さないからね。
今度は絶対に元に戻さないからね。
国王と国王と血の繋がった者は、死ぬまで疣臭豚にするからね」

ルークが魔法を使って皆に話しています。
王都上空に大規模な魔法陣を描く事で、脅迫も兼ねていたのでしょう。
ドレスガン王国の王都に住む貴族と民、その全てに魔法で伝えました。
そしてさらに大規模な魔法陣を描き、王城に住む国王と一族に呪いの魔法をかけました。

最初の大規模魔法陣を使った時点で、王都ばかりか王城の防御魔法を無効にしたのだと思います。
ルークと敵対するのですから、それくらいの準備はしていたでしょう。
いえ、そもそも建国から三百年の名門大国です。
王都や王城を護る防御魔法は、代を重ねれば重ねるほど強くなっていたはずです。
それを打ち破ってケリガン王と一族に呪いをかけるなんて、尋常一様の魔力ではありません。

「お姉ちゃん、終わったから帰ろう」

「もう大丈夫なの?
ケリガン王は文句言わない?」

「言わないよ。
言いたくても人間の言葉は話せないよ」

心配はいりませんでした。
ルークにとっては、名門大国の防御魔法陣でも、紙同然なのです。
破壊するのに対した労力を必要としないのでしょう。
魔力を使い過ぎた事による疲労が全く見えません。
でもこのまま帰る訳にはいきません。

「ルーク。
ケリガン王への罰は仕方がないけど、このままでは駄目よ。
ドレスガン王国と領地を接する国に、侵略しないように言わないと、国民が殺されたり傷つけられたりしてしまうわ。
ルークは自分のした事の責任を取らないといけません。
ベネット王国のグレイソン王を変化させた時と同じように、隣国に警告してね」

「分かったよ。
めんどくさいけど、お姉ちゃんがそう言うのならやるよ」

私が真剣に話しているのを分かってくれたのでしょう。
ルークは直ぐにドレスガン王国と領地を接する国を回ってくれました。
ドレスガン王国の時と同じように、それぞれの王都を護る防御魔法を打ち破り、王都に住む王族・貴族・平民全てに警告を発してくれました。

「罰としてケリガン王と家族を変化させたけれど、その隙を突いてドレスガン王国に侵攻したら、侵攻した民を全員疣蛙に変化させるからね」と。

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