男爵令嬢はつがいが現れたので婚約破棄されました。

克全

第61話ドルイガ視点

糞、糞、糞、糞!
格段に強くなってやがる!
前回確実に殺しておくべきだった!
まだ俺の方が強いから、奇襲を受けても死なずに済んだが、そうでなければ一撃で殺されていた。
なんて野郎だ!

問題はレナードが持っている武器だ。
普通の武器とは圧倒的に硬度と粘りが違う。
此方の武器を断ち切られないように、最新の注意を払って受け止めなければいけないから、それが俺の反撃を一呼吸遅くしている。
そしてその遅れが、徐々に俺を追い詰めていく。

長期戦になれば、獣人族の俺の方が体力が続く可能性がある。
だが、こいつが王太子から秘宝を貸し与えられている可能性がある。
あの王太子なら、帝国の秘宝でも平気で貸し与えるだろう。
それに、この武器は大魔境の素材を使っているのだろう。
大魔境でとんでもない薬を手に入れている可能性もある。
それだけではなく、根本的な体力が向上している可能性もある。
こんな短期間にこれほど強くなったのだ、あらゆる可能性を考慮しなければ、死ぬのは俺の方だ。

ここまで来て、ヴィヴィアンを失うなど耐えられない。
皇帝陛下を脅し側近共を殺しててまで手に入れた条件だ。
俺が逃げ出せば、それが全て振出しに戻ってしまう。
いや、ハント男爵が皇都に来ないと、皇帝陛下の印象が著しく悪化する。
振出しどころか後退してしまう
ここは絶対に逃げ出すわけにはいかない!
卑怯と謗られようと、切り札を使う時だ!

「ギャァァァァアァアァアア」

眼が、眼が見えない!
毒液が、俺にかかるだと?
何故俺が放った毒液が逆流する?
守りの魔道具か?
反射の魔道具なのか?
だがそれなら俺も持っている。
レナードが守りの魔道具や反射の魔道具を持っていたとしても、俺の魔道具が再反射してくれるはずだ!

数か?
数が多いのか!
俺の持つ魔道具を超える守りと反射の魔道具を持っていたというのか?
ミースロッド公爵家の後継者である俺以上の魔道具を装備していたというのか!?

王太子だ!
王太子が形振り構わず帝王家帝国の魔道具を与えたのだ!
そうでなければこんなことにはならない!

逃げてやる。
何があっても逃げ延びてやる!
どれほど時間がかかっても、必ずヴィヴィアンを手に入れる!
レナードと同じ武器が手に入れば俺の方が強いのだ!
大魔境で魔獣と戦えば、同じ武器が手に入る。
根本的な体力や瞬発力も向上するだろう。

ウグッウ!
腹を、裂かれたか?
斬馬刀を捨てて長剣に持ちかえやがったのか?
ここまで作戦を考えてやがったというのか!
俺が毒液という切り札を使うことまで計算していたというのか?
眼が見えず、気配だけでレナードの剣速から逃げるのは無理か?
いや、諦めてたまるか!
必ず生き延びて、レナードからヴィヴィアンを奪ってやる!



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