男爵令嬢はつがいが現れたので婚約破棄されました。

克全

第55話

「命令です!
半年間、皇帝陛下と交渉しなさい!」

私が厳しく命じると、最初はギクシャクと動いていたドルイガ、しばらくすると滑らかに動きだしました。
少しの時間掘り返した落盤を見つめていましたが、直ぐに何か決意したような表情と成り、飛ぶように洞窟の外に向かって走り出しました。

精霊を使役する魔道具を使い、ドルイガを追いかけさせましたが、とても追いつけません。
ドルイガに少し遅れて洞窟の外にでた精霊が伝えてきたのは、ドルイガが先程外に出るように命じた配下に指示している姿でした。
ドルイガは約束を守ってチャンと配下を外に出していました。
こういう一つ一つの情報を積み重ねて、正しい判断が下せるのです。

「父上、本当に半年交渉してくれるでしょうか?」

「それは分からないが、少しは時間を稼げるだろう。
まずは完全に配下を撤退させるのか、見張りを残すかを確かめないとな」

「それは当然見張りを残すでしょう。
ここで見張りを残さないようなら、それこそ安心して組めません」

あら、あら、あら。
デリラはもう味方として戦う想定をしていますね。
レナードを切り捨ててドルイガと手を組む心算なのでしょうか?
確かにあらゆる可能性を考慮しなければいけませんが、私の名誉にも配慮して欲しいものです。

「デリラ。
ドルイガと組む可能性が高いと思っているの?」

「それは閉じこもっていた間の情報が揃ってからしか判断できません。
特に帝国の獣人貴族がドルイガに付くのか帝国に残るかで全く違います。
彼らがドルイガに寝返るのなら、御姉様にドルイガと結婚してもらう確率は九割九分になります。
彼らが帝国に残るのなら、確率は六割五分というところです」

「それでもドルイガが優勢なのな?」

「レナードが王太子殿下と組んでようやく互角です。
一旦本領に戻ったドルイガは、今度は本気です。
単に帝国獣人貴族を支援するためではなくなります。
己の番いを手に入れるためにやってくるのです。
動けせる限りの手練れを連れてくるでしょう。
帝位継承権争いが再燃した帝国では、とても太刀打ちできません」

情けない事ですが、その通りなのでしょう。
人の欲が尽きることはないのでしょう。
一旦諦めた帝位でも、再び手に入る可能性が出て来たら、国を傾けることになっても、謀略を仕掛けて手に入れようとするのでしょう。

「おい、四人残して撤退していったぞ。
再度落盤を起こして守りを固める。
そうすればここに籠っていると勘違いするだろう。
斥候の精霊と伝令用使い魔を駆使して、情報を集め次に備えるぞ」

「「「はい!」」」

父上の判断に従って、四人手分けして動きました。
できれば王都屋敷か本領本城に戻りたいですね。

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