男爵令嬢はつがいが現れたので婚約破棄されました。

克全

第51話

「慎重だな。
それに、本気のようだな。
なにより、ミースロッド公爵家が大陸を統一するとは、愉快な事を言ってくれる!
ふむ、父上に相談しないといけないが、全く不可能でもないか?
レナードの血を引き継いだヴィヴィアンの子供か……
嫉妬が無いわけではない。
人獅子獣人族なら、前の男の子供は皆殺しにするのだが、ミースロッド公爵家にはそんな習慣も家訓もない。
まあいい、約束はできんが、これも父上と相談しよう。
ミースロッド公爵家が大陸を統一するのなら、ヴィヴィアンとレナードの子供が生まれるとしたら、元帝国領の一部を預ける代官にはうってつけだろう。
他の願いはあるのか?
領地や爵位の優先順位はどうなる?」

「ミースロッド公爵家が大陸を統一するのなら、ハント男爵家は侯爵家とし、それに相応しい領地を頂きたいです。
皇国が統一するのなら、ハント男爵家も共に戦いますので、伯爵位とそれに相応しい領地を皇帝陛下に御願いして頂きたいです」

「ほう!
共に戦うというのか?」

「ハント男爵家は帝国に忠誠を誓い、誠心誠意仕えて来ました。
しかしながら、この危急の時に助けてはくれません。
レナードが夫としてドルイガ殿と戦っていた時に、王太子殿下が助力してくれましたが、王国として援軍を送ってくれた訳ではありません。
忠誠を尽し奉公しているにもかかわらず、何の助力も頂けないのなら、これ以上忠誠を尽す必要はないというのが、ハント男爵家の総意です。
皇帝陛下が伯爵位と領地を前払いしてくださるのなら、ハント男爵家はできるだけ早く帝国領内で挙兵します」

「ほう!
今兵を挙げれば、帝国軍に袋叩きにあうのではないか?
離婚期間中のレナードや、親交のある王太子とも戦う事になるのではないか?
それでハント男爵家は生き延びられるのか?」

「ドルイガ殿が私を見捨てる事はないと信じています。
ドルイガ殿が助力してくださるのなら、レナードと王太子が万余の兵を率いてきたとしても、負ける事はないでしょう。
それに万が一の事があっても、城と領地を爵位を事前に頂いていれば、家族で転移して逃げる事は簡単です」

「ファッハッハハハハ!
これは愉快だ!
ファッハッハハハハ!
分かった、分かった。
俺がいれば、レナードも王太子も万余の兵も怖くはないか!
ファッハッハハハハ!
よく言った!
皇帝陛下が何を言うおうと、父上が何と言っても、俺はハント男爵家を助ける。
これは先祖の霊に誓って約束する。
それでどうだ?」

「ありがとうございます。
ですがその約束では、命を護るだけならば何の心配もありませんが、家を保つと言う意味では不足です。
それでは、直ぐに兵を挙げる訳にはいきません。
皇帝陛下に御約束して頂けるまでは、ひっそりと隠れさせて頂きます。
それで皇帝陛下に恭順を拒否された場合の条件ですが、宜しいですか?」

「ああ、いいぞ。
父上が聞き届けてくれるかどうかは分からないが、聞くだけ聞こう」

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