男爵令嬢はつがいが現れたので婚約破棄されました。

克全

第30話王太子視点

なんて奴だ!
攻撃が全く通じない。
レナードを殺そうとしている背後から襲ったのだ。
もっとも油断して隙がある時のはずだ。
なのに余の攻撃に気がつき、即座に対応しやがった。
普通に相対しての戦いでも、余の攻撃に刃を合わせられる者は少ないのだ。
それを、背後から襲われたのに、平気で反撃までしてきやがる。

一つ一つの攻撃が早く、しかも、とてつもなく重い。
レナードに匹敵する、いや、レナードを凌駕する攻撃だ。
先に奇襲していなかったら、互角に討ち合う事も難しかっただろう。
奇襲の勢いで押していたからこそ、互角に討ち合えたのだ。
勢いを殺されたら、敵の攻撃を受けるのが精一杯だ。

こちらから攻撃する事ができなくなっている。
もし、レナードが敵の方天戟を曲げてくれていなかったら、もっと一撃一撃が威力の籠ったモノになっていただろう。
そうなっていたら、余はすでに死んでいたかもしれない。
だが、余は一人ではない!
余にはレナードと言う友がいるのだ!

レナードが余に支援魔法をかけてくれる。
これで支援魔法が二重にかけられ、より効果が出る。
レナードが敵の後ろから襲い掛かる。
左腕を切り飛ばされた時に、装備を失っていたのだろう。
斬馬刀を握るレナードの左腕が剥き出しだ。

「ウガッァァァァア!」

敵が、唸り声をあげやがった!
人虎種の特殊能力か?
雄叫びに威圧効果があるのか?
一瞬動けなくなってしまった!
まずい!
これではレナードが攻撃されてしまう!

敵はレナードの方に振り返る勢いを利用して、方天戟に回転力を込める。
あんな一撃を受けたら、レナードでもただではすまない。
それでなくても左腕は再生したばかりだ。
力も速さも完全ではない。
逃げてくれ!

余の想いなど気にするレナードではなかった。
そのまま真直ぐに突っ込んで来て、方天戟ごと敵を一刀両断にしようとする。
だが、敵が想定を遥かに超える反応をした。
左手を方天戟から離し、腰の短剣を投げつけてきた!
それも三連投だ!

何時ものレナードなら、最小の動きで短剣を払い、そのままの勢いで敵を斬り捨てただろう。
だが今回のレナードは慎重だ。
勢いを生かして右に飛んで避ける。
そうか!
短剣の後に来る爪撃を警戒したのだ。

さっき爪撃で左腕を失っているレナードだ。
爪撃の威力を最小に抑えるために、敵の左腕との距離を詰め、爪撃の破壊力を抑えようとしているのだな。
時間がかかるのは悪くない。
その間に威圧効果が消えるはずだ。
余とレナードがに二重かけした支援魔法だ、完全には防げなかったが、威圧効果は小さくなっているはずだ。

あ?
逃げやがった?!
人虎種が敵前逃亡するのか?!

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