男爵令嬢はつがいが現れたので婚約破棄されました。

克全

第14話

「レナード。
もう来ないようにお願いしたはずだけど?」

今日もレナードが迎えに来ます。
これではまた殿下にご迷惑をおかけしてしまいます。
父上様の情報では、ブリーレはまだ諦めていないようです。
新たな刺客を集めているそうです。
執念深い女です。

ブリーレの狙いは私です。
私を殺したくて仕方がないのです。
クリスチャンが手を貸しているのも確かです。
父が集めた情報ですから間違いありません。
番いと言うのは恐ろしいモノです。

ブリーレに出会うまでは、あれほど立派だったのに。
こんなに愚かな行動をするとは、思いもしませんでした。
番いに出会わなければ、立派な侯爵になられたでしょうに。
今ではブリーレの操り人形です。
可哀想な事です。

それと、父の集めた多岐にわたる情報で思い知ったことがあります。
レナードが私の事を護ろうとして、辺境伯の任を辞職した事です。
それと殿下がレナードを想っている事です。
全然気がつきませんでした。
私には欠けた所があるのは分かっていました。

他の令嬢たちのように、恋する気持ちがないのです。
公子様たちの事を想って、ときめいた事など一度もないのです。
レナードの私への想いにも、全く気がつきませんでした。
殿下のレナードへの想いも、全く気がつきませんでした。
襲撃以来、十日も御一緒していたのに……

私のような心の欠けた人間は、レナードのような勇者には相応しくありません。
だからレナードには迎えに来ないように伝えたのです。
ハント男爵家の事は、家族でかたをつけると決めたのです。
デリラは嬉しそうにしていましたが、父にたしなめられていました。
父が、ハント男爵家には跡継ぎが必要だと言った時には、意気消沈していました。

でも父が、私には婿を迎えると言ったら、飛び上がらんばかりに喜んでいました。
デリラは私を慕ってくれているのでしょう。
レナードの想いも、殿下の想いも気がつかなかった私です。
デリラの事も何か勘違いしているのかもしれません。

「御姉様。
ここはレナード様の想いに応えましょう。
父上も御姉様には婿を迎えると言っていたではありませんか」

デリラはなにを言っているのでしょう?
レナードは一代辺境伯は返上したと言っても、世襲子爵位を賜っています。
男爵家に婿入りなど不可能です。
それなのにこんな事を言うなんて、なにを考えているのでしょう?


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