女将軍 井伊直虎

克全

第90話中国地方の攻防3

1569年『近江・観音寺城』今川義直・直虎

「母上様、誰を味方にすべきでしょうか」

「簡単に考えられませ」

「どういうことでございますか」

「公方様の政の邪魔になる者は攻め滅ぼさねばなりません、そのために必要な者を味方にするのです」

「私の敵といえば、まずは阿波公方と阿波三好家ですね」

「次に政の邪魔になる者は誰ですか」

「北畠と北条・武田も油断するわけには行きませんが、今のところは友好関係を結んでいます。そうなると畿内の政に影響を与えるほどの大国となれば、大内の跡を継ぐ形の毛利でしょう」

「そうなりますね、三好・毛利は勿論ですが、領地を接する浦上と謀略家の宇喜多は滅ぼさねばなりません、そのために味方にすべきは誰ですか」

「すでに父上様と直竜・直元が味方と決めた者を別にすれば、公方様がお決めになればいいのです」

「しかし、合戦現場の事を知っておられる、御隠居様に一任したほうがいいのではありませんか」

「今はそれでいいでしょう、ですが今後直竜や直元が軍勢を仕切るようになった場合に困ります」

「直竜や直元であろうと、全面的に信じてはいけないということですか」

「宇喜多直家の事を知ったではありませんか、白拍子や歩き巫女から情報を得て、遠く本拠にいても正しい判断が下せる修練を積まねばなりません」

「わかりました、では今できる判断をして、御隠居様にそれが正しいか教えていただきましょう」

「そうですね、それがいいでしょう、それでどうなされますか」

「確か松田元輝の次男が、因幡の山名豊国の下に逃げ込んでいたのでしたね」

「はい、いいところに目をつけられましたね」

「松田元輝を旗頭にすれば、直接裏切った伊賀久隆・家久は別にして、他の松田家旧臣達は宇喜多を裏切る大義名分が立ちますね」

「そうですね、それはいいお考えですが、松田家だけですか」

「毛利と浦上・宇喜多を敵と決めるのなら、三村元親を味方につけるのもいいでしょうが、そうなると備中1国を任せることになります」

「備中1国なら18万国程度でしょう、それに備中国内にも三村家を快く思っていない国衆もいるのです」

「確か庄家が三村家に敵対していましたね」

「何時も通り三村家の国衆に、幕府の役職を与えて独立させるのです」

「分かりました、庄家の家督を奪われた庄高資と嫡男なのに庄家の養嗣子に入った庄元祐、そして三村元親の3家に分けて備中を統治させます」

毛利家の九州進攻に備中の毛利方が参加していたが、その隙をついて宇喜多直家も備中に侵攻していた。つまり毛利家は、当初九州で有利に大友家と戦っていたが、大内輝弘が周防が上陸し尼子勝久が出雲に上陸し、今川義元に率いられた幕府軍も着々と侵攻していたのだ。

この状況下で松山城の庄高資や斉田城の植木秀長らが、本領安堵を条件に降伏し宇喜多直家の傘下となっていた。この圧倒的不利な状況の打開する為に、毛利元就は大友家と講和して九州から兵を引き上げたのだ。そして毛利元清(穂井田元清)を備中へ向かわせ、後月・小田・浅口の備中南西部を回復し、諸兵を従えて植木秀長が立て籠もる斉田城を攻めた。だが斉田城包囲戦となり、宇喜多直家の援軍と合戦となり、穂井田実近が戦死し三村元親も深手を負い毛利元清は退却していた。

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