女将軍 井伊直虎

克全

第78話堺包囲

直竜は、戦うことなく和泉の国衆・地侍を軍勢に加えた。

河内勢 :七千兵
和泉勢 :三千兵

他の国に比べて根こそぎ動員をかけて、三好三人衆と結んで再度裏切り、背後から挟撃されないようにした。これにより三好三人衆は一万の兵力が減り、直竜勢は一万の兵力が増えたことになった。圧倒的な勢力比になった状況で、いよいよ堺を屈服させることになった。

堺は周りに濠と土塁を設けて牢人衆を傭兵に雇い、自治都市として武家に屈服しない状態だった。だがここに来て三好三人衆、特に三好宗渭と近かったことが大問題となった。新将軍・足利義直と完全な敵対関係となってしまったので、今まで反主流派だった商人を前面に出して、新生将軍家と新たか関係を構築しようとした。

しかし最前線を任されてる直竜にそんな権限はなかったし、補佐役として側近くに仕える、松平直康(諱を貰って名前が変わった松平元康)にも関口親永にもそんな権限はなかった。堺制圧勢に与えられた権限は、全ての財産を置いて堺を退去させるか、堺衆の財産を全て失ってでも堺に火を放って灰燼に帰すことだった。

商人として駆け引き交渉する心算だった堺衆は、直竜と側近衆が本気で堺を焼き払う気でいる事に恐怖した。急ぎ後詰の今川義元公に交渉すべく、今川家と縁のある商人を向かわせ、公家に仲介を頼み同行してもらったものの門前払いを喰らった。

堺衆の代表は、直竜や直康・親永に賄賂を交渉しようとしたが、それが逆に直竜の逆鱗に触れ無礼討ちになってしまった。急ぎ別の代表が土下座をして謝り、新将軍へ御詫びを入れる事を願ったため、あらかじめ決めてあった交渉期限まで焼き討ちを待ってやることになった。


1568年『近江・観音寺城』今川義直・直虎

「あれでよかったのでございますか」

「ええ、上出来でございますよ」

「しかし四本商人は叡山の影響を受けていますし、堅田の商人は一向宗の影響が大きいと聞きます、他の商人たちもいろんな所の影響を受けています」

「交易に必要な殆どの船は、公方様の水軍衆が担っております、昔の影響は徐々に排除できますよ」

「今回の堺のように、表だって逆らえば攻め滅ぼせばいいのです」

「見せしめでございますか」

「はい、一度くらいは恐怖を与えておく方がいいのです」

「しかし母上様、全財産を差し出すのなら、堺に残って商いをさせてやってもよいのではありませんか」

「公方様はそうさせてやりたいのですね」

「はい」

「ならば私が門前払いさせた使者を、公方様が呼び戻してやりなされませ、さすれば誰が本当の権力者かあの者達も思い知るでしょう」

「あの者達が、御隠居様や母上様に使者を送ったのが気に入らなかったのですか」

「公方様の頭ごなしに政が行われてはいけません。確かに父として母として、公方様を心から愛し助言はさせて頂きますが、あくまでも公方様が最終的にこの国の政をお決めになるのです」

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