女将軍 井伊直虎
第48話蒲生家始末
『観音寺城・義直・直虎』
「母上様、どういたしましょう?」
「義直様はどうなさりたいのですか?」
「六角は攻め滅ぼした方がいいのですね?」
「近江を完全に手に入れるにはその必要がありますね。」
「蒲生家から逃げ出して甲賀に落ちて行ったと聞いていますが。」
「祖先の戦略に習ったのでしょう。」
「そうなのですか?」
「六角義賢の祖父・六角高頼が行った鈎の陣に倣ったものでしょうね、高頼はこの戦略で足利幕府の討伐軍を撃退して勝利していますから。」
「では我々も気をつけなければいけないのですね。」
「そうですね、特に甲賀と伊賀の忍びには気をつけなければいけません。」
「心致します。」
六角義賢・義治親子は、望月三雲を頼って甲賀の望月城に逃げ込んでいた。望月城は東へ張り出した尾根の先端に築かれており、谷を挟んだ南側の尾根には望月支城、南東には杉谷砦、北方には杉谷城が築かれている。
『観音寺城・井伊直平・蒲生定秀』
「定秀殿、よくぞ参られた、これからは義直様の為に働いてもらいたい。」
「はい、誠心誠意働かせて頂きます。」
「そこで相談があるのだがな。」
「はい、何事でございますか?」
「小倉家のことだ。」
「小倉西家から不服が出ているのでございますか。」
「そうだ、実隆殿の養子縁組は六角義賢を後ろ盾にして無理矢理押し付けられたもの、本来なら血縁が繋がっている小倉西家から出すべきだと請願して来ている。」
「養子縁組を解消しろと言う事でございますか。」
「力を行使した無理無体は恨みを買う、それが六角家を甲賀に落とす結果となった。だが定秀殿が小倉宗家継承に何の問題もないと言うのなら、武士の意地を示して合戦に持ち込まれたらいい。」
「義直様はそれを傍観されるのですか?」
「いや、近江への道案内をしてくれた小倉西家の奉公には応えなければならない、全力を持って援軍を出すと言われておられる。」
「それは六角義賢様と同じ事を為されると言う事ですね!」
「そうだよ、定秀殿が六角家の力を使って小倉家に飲ませた苦渋を、今度は定秀殿に飲んでもらうと言うことだよ。」
「・・・・・」
「恨まれているな定秀殿。」
「青地家からは苦情は出ていないのですか。」
「今の所は出ていないな。」
「出たらどうなされるのですか?」
「義直様は丁寧に話を聞くと言われている、だが一旦決定したものは覆せないだろうな。」
「それは小倉家の話を受ければ、青地家の養子縁組は解消されないと言う事ですか?」
「武家の当主としてふさわしいか、一騎打ちで決着してもらう方法もあるが、蒲生家の領地や縁組を義直様が認めた後では、よほどの事が無ければ再度の評定は行われないだろうな。」
「承りました、実隆の小倉家との養子縁組は解消させて頂きます。」
「そうか、そう言ってもらえたら合戦を1つしなくて済む。代わりと言っては何だが、実隆殿は義直様の直臣として召し抱えよう。」
「有り難き幸せでございます。」
「さて次に人質の問題なのだが。」
「はい、駿河まで送らせて頂きます。」
「いやその必要はない、御屋形様のおられる駿河では遠すぎて普段会う事も出来ない、美濃の稲葉山城に送ってくれればいい。」
「それは有り難き事でございますが、今川家で問題はなりませんか?」
「もう分かっているだろうが、御屋形様とは今川家の家督争いが起こるだろう。」
「そのような事を口に出されてもいいのですか?」
「御隠居様も御屋形様と義直様が命を懸けて争っておられるのは知っておられるし、今川家中でもそれは周知の事実だ。だが三河・尾張・北伊勢・美濃・南近江はほぼ義直様が抑えておられるから、今なら定秀殿も義直様の側近や奉行になれると言いたいのだよ。」
「直平様、孫の鶴千代を義直様の小姓として出仕させて頂けないでしょうか?」
「そうしてくれるか、そうしてもらえると色々と都合がいい。」
「国衆・地侍の嫡子・嫡孫を小姓として人質に取られるのですか?」
「ああ、駿河の今川館ではなく、稲葉山城や観音寺城に出仕しさせる心算だ、そうなれば少しは安心できる。」
「承りました。」
義直が近江国に侵攻した当初、蒲生定秀は息子(蒲生賢秀・青地茂綱・小倉実隆)達を率いて義直に抵抗しようとした。だが美濃・伊勢・三河・遠江から続々と参集する国衆・地侍は4万を超え、もはや抵抗する術はなかった。何より国衆・地侍に頼らない直卒軍3万が常に側を固めている事が大きかった。
「母上様、どういたしましょう?」
「義直様はどうなさりたいのですか?」
「六角は攻め滅ぼした方がいいのですね?」
「近江を完全に手に入れるにはその必要がありますね。」
「蒲生家から逃げ出して甲賀に落ちて行ったと聞いていますが。」
「祖先の戦略に習ったのでしょう。」
「そうなのですか?」
「六角義賢の祖父・六角高頼が行った鈎の陣に倣ったものでしょうね、高頼はこの戦略で足利幕府の討伐軍を撃退して勝利していますから。」
「では我々も気をつけなければいけないのですね。」
「そうですね、特に甲賀と伊賀の忍びには気をつけなければいけません。」
「心致します。」
六角義賢・義治親子は、望月三雲を頼って甲賀の望月城に逃げ込んでいた。望月城は東へ張り出した尾根の先端に築かれており、谷を挟んだ南側の尾根には望月支城、南東には杉谷砦、北方には杉谷城が築かれている。
『観音寺城・井伊直平・蒲生定秀』
「定秀殿、よくぞ参られた、これからは義直様の為に働いてもらいたい。」
「はい、誠心誠意働かせて頂きます。」
「そこで相談があるのだがな。」
「はい、何事でございますか?」
「小倉家のことだ。」
「小倉西家から不服が出ているのでございますか。」
「そうだ、実隆殿の養子縁組は六角義賢を後ろ盾にして無理矢理押し付けられたもの、本来なら血縁が繋がっている小倉西家から出すべきだと請願して来ている。」
「養子縁組を解消しろと言う事でございますか。」
「力を行使した無理無体は恨みを買う、それが六角家を甲賀に落とす結果となった。だが定秀殿が小倉宗家継承に何の問題もないと言うのなら、武士の意地を示して合戦に持ち込まれたらいい。」
「義直様はそれを傍観されるのですか?」
「いや、近江への道案内をしてくれた小倉西家の奉公には応えなければならない、全力を持って援軍を出すと言われておられる。」
「それは六角義賢様と同じ事を為されると言う事ですね!」
「そうだよ、定秀殿が六角家の力を使って小倉家に飲ませた苦渋を、今度は定秀殿に飲んでもらうと言うことだよ。」
「・・・・・」
「恨まれているな定秀殿。」
「青地家からは苦情は出ていないのですか。」
「今の所は出ていないな。」
「出たらどうなされるのですか?」
「義直様は丁寧に話を聞くと言われている、だが一旦決定したものは覆せないだろうな。」
「それは小倉家の話を受ければ、青地家の養子縁組は解消されないと言う事ですか?」
「武家の当主としてふさわしいか、一騎打ちで決着してもらう方法もあるが、蒲生家の領地や縁組を義直様が認めた後では、よほどの事が無ければ再度の評定は行われないだろうな。」
「承りました、実隆の小倉家との養子縁組は解消させて頂きます。」
「そうか、そう言ってもらえたら合戦を1つしなくて済む。代わりと言っては何だが、実隆殿は義直様の直臣として召し抱えよう。」
「有り難き幸せでございます。」
「さて次に人質の問題なのだが。」
「はい、駿河まで送らせて頂きます。」
「いやその必要はない、御屋形様のおられる駿河では遠すぎて普段会う事も出来ない、美濃の稲葉山城に送ってくれればいい。」
「それは有り難き事でございますが、今川家で問題はなりませんか?」
「もう分かっているだろうが、御屋形様とは今川家の家督争いが起こるだろう。」
「そのような事を口に出されてもいいのですか?」
「御隠居様も御屋形様と義直様が命を懸けて争っておられるのは知っておられるし、今川家中でもそれは周知の事実だ。だが三河・尾張・北伊勢・美濃・南近江はほぼ義直様が抑えておられるから、今なら定秀殿も義直様の側近や奉行になれると言いたいのだよ。」
「直平様、孫の鶴千代を義直様の小姓として出仕させて頂けないでしょうか?」
「そうしてくれるか、そうしてもらえると色々と都合がいい。」
「国衆・地侍の嫡子・嫡孫を小姓として人質に取られるのですか?」
「ああ、駿河の今川館ではなく、稲葉山城や観音寺城に出仕しさせる心算だ、そうなれば少しは安心できる。」
「承りました。」
義直が近江国に侵攻した当初、蒲生定秀は息子(蒲生賢秀・青地茂綱・小倉実隆)達を率いて義直に抵抗しようとした。だが美濃・伊勢・三河・遠江から続々と参集する国衆・地侍は4万を超え、もはや抵抗する術はなかった。何より国衆・地侍に頼らない直卒軍3万が常に側を固めている事が大きかった。
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