女将軍 井伊直虎

克全

第46話北伊勢制圧

『稲葉山城』

「母上様、上手く運びましたね。」

「全ては義直様の手腕でございますよ。」

「いえいえ、母上様の御陰で御座います。」

「そんな事はありませんよ、義直様が多くの家臣の献策の中から、1番よい策を取り上げられたからこその成果です。家臣がどれほどよい策を提案しても、義直様が取り上げなければどうにもならないのですから。」

「心致します。」

北勢四十八家(ほくせいしじゅうはちけ)で六角寄りだった家が今川家に降伏臣従した。

千種忠基は六角家の重臣・後藤但馬守賢豊の弟が千種家に養子に入ったが、以前も書いていた通り、養父とその実子を追放した極悪非道な男なので攻め殺された。

もちろん抵抗しようとしたが、5万の援軍を得た千種忠治に、元の家臣や周辺国衆・地侍が味方した為に、千種忠基は容易く討ち取られる事になった。だが同時に、以前千種忠治を裏切った直臣は全て討ち滅ぼされた。


『梅戸城』

「殿、ここは近江にお逃げください。」

「何を申す!」

「ですが殿、このままでは殿の御命も危うく、梅戸家も滅んでしまいます。ここは御実家の六角家を頼り一旦落延びられ、六角家の兵と共にお戻り下さい。そうすれば殿の御命も助かり、梅戸家も家名を残す事も出来ます。」

「う~む。」

「殿、ここは捲土重来を計りくださりませ!」

「仕方あるまい、後の事は頼んだぞ!」

「お任せください。」

梅戸高実も今川軍を恐れた家臣団により体よく追放された。

今川家の伊勢侵攻軍は、美濃国伊勢国の国境である桑名郡と員弁郡の郡境から侵攻を始めた。そして員弁郡・桑名郡・朝明郡を攻略しようとした。

これに対して桑名郡下深谷城主の近藤家教や、員弁郡の上木九郎左衛門、朝明郡の木俣隠岐守及び茂福左衛門尉は義直に降伏臣従してきた。更に員弁郡の白瀬家・三重郡の浜田家・朝明郡の高松家などが次々と降伏臣従してきた。最終的には、北畠家と直結する家以外は全て義直に降伏臣従してきた。


『稲葉山城』

「母上様、この程度でよかったのでしょうか?」

「義直様は南朝に重きを置かれるのが大切なのです、北畠家・楠家・千種家には気を使わなければなりません。」

「北畠に近い北勢四十八家は手をつけない方がいいのですね。」

「ですが今から紀伊の南朝勢力には接触しておきましょう、特に熊野本宮大社の神官・楠正隆殿には色々と動いて頂きましょう。」

「はい、母上様。」

戦国時代の群雄割拠で伊勢国の大きく4つの勢力に分かれた。

1・南勢の五郡は国司である北畠具教が勢力を持つ。
2・安濃郡地域は長野一族と安濃郡の雲林院に住む工藤一族が勢力を持つ。
3・鈴鹿郡の亀山市付近、河由郡の神戸地域などの地域は関一族勢力を持つ。
4・北勢の諸侍の一派、三重郡千種城主の千種家の当主になる千種忠房が属する北勢四十八家。その他の領主は、宇野部家、後藤家、赤堀家、楠家、稲生家、南部家、萱生家(春日部家)、持福家(朝倉家)、俣木家、富田家(南部家)、浜田家(田原家・赤堀家)、阿下喜家、白瀬家、高松家が有数な諸家。

「その他」
桑名郡地域 自由都市「十楽の津」桑名衆が統治。
員弁郡地域 梅戸氏が率いる「北方一揆」が統治。
朝明郡地域 朝倉家を中心とする朝倉家・海老名家・佐脇家・疋田家・富永家・横瀬家・南部家の「十ヶ所人数」が統治。

「義直が降伏臣従させた北勢家」
桑名郡下深谷城主・近藤家教
桑名郡松が島城主・伊藤四郎重晴
桑名郡東方城主・渡辺掃部郎
桑名郡走井城主・矢田市郎右衛門尉
桑名郡深谷部柳が島城主・安藤左京進
桑名郡堺村城主・片岡掃部郎
桑名郡柚井村城主・西松要人
桑名郡深谷部北狭間城主・
桑名郡梅戸城主・小阪源九郎政吉
桑名郡桑名城主・伊藤武右衛門
桑名郡別所城主・後藤弥五郎が当主
桑名郡糠田城主・後藤太郎左衛門
桑名郡御衣野城・草薙出雲守
桑名郡矢田城主・矢田俊元
桑名郡上深谷城・片岡掃部郎
桑名郡大鳥井城・水谷與三兵衛
員弁郡小山城主・高井民部少輔
員弁郡猪飼城主・小串次郎右衛門常政
員弁郡星川城主・春日部若狭守
員弁郡桑部城主・毛利次郎左衛門
員弁郡上井城主・松岡彦之進家勝
金井城主    松岡彦之進家勝
城井戸城主   松岡彦之進家勝
上木九郎左衛門
白瀬家
員弁郡長深城主・富永筑後守
員弁郡保々城主・保々越前守
員弁郡笠田城主・多度大蔵助
員弁郡治田城主・治田山城守
員弁郡野尻城主・西野左馬助
員弁郡島田城主・野村兵庫助は近江佐々木家の末裔で六角方であったため滅ぼした。
員弁郡白瀬城主・近藤弾正左衛門尉吉綱
員弁郡大泉金井城主・種村弾正左衛門尉
朝明郡羽津城主・田原肥前守
朝明郡茂福城主・茂福盈豊
朝明郡富田城主・南部兼綱
朝明郡萱生城主・春日部左衛門射
朝明郡中野城主・赤堀藤左衛門
朝明郡広永城主・横瀬勝五郎
朝明郡伊坂城主・春日部太郎左衛門
木俣隠岐守
三重郡千種城主・千種忠治
三重郡宇野部城・後藤民部実重
三重郡大矢知城・大矢知遠江守
三重郡浜田城主・浜田遠江守宗武
三重郡宇野部城・後藤民部実重
三重郡赤堀城主・田原肥前守
上木城主・片山主計
安芸郡稲生城主・稲生勘解由左衛門兼顕
松岡彦之進家勝 上井城主・金井城主・城井戸城主

楠山城六代目城主・楠木正忠
八田城主・楠正具
楠正邦・楠土佐守・楠正孝
熊野本宮大社の神官・楠正隆・良治・良清

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