女将軍 井伊直虎
第35話再調略
『那古屋城』
「母上様、次は上野城の下方左近貞清の調略でございますか?」
「忠義の勇者です、調略に応じるとは思えません、ですがどうしても義直様の配下に欲しい武辺者です。」
「生け捕りにするのですか?」
「信長を討ち取るまで包囲しておきましょう。」
「それほどまでして私の配下に迎えたい武辺者なのですね?」
「そうですよ。」
「植田城の横地秀次は、我らの勢力範囲に孤立しているのですね?」
「そうです、上手く調略出来れば支城の猪子石城も降るでしょう。」
「米田城の簗田政綱も調略でございますか?」
「最初はそれでいいでしょう、降らぬようなら攻め滅ぼしましょう。」
「分かりました、大森城の水野雅楽頭も同じで宜しいですか?」
「そうですね、そうしましょう。」
「小林城の牧長清の調略は難しいでしょうか?」
「そうですね、斯波義銀の従兄弟で織田信長の妹婿・義兄弟です、易々と降るとは思えません。4千石の領地を持っていますし、最悪攻め滅ぼして義直様の蔵入り地といたしましょう。ですが一応使者だけは送っておいて損はないでしょう。」
「あとは日置城の織田忠寛ですね、織田一門ですが素直に降るでしょうか?」
「応じなければ攻め滅ぼせばいいのです。順番から言えば最初に攻めるべきはこの城ですから、見せしめの為にも容赦する事はありません。」
「分かりました、まずはこの辺りから始めます。」
『日置城外』
義直は1万兵を率いて那古屋城を出陣した。最初に小林城の牧長清を包囲したが、素直に降伏に応じなかったので城内の内通者に城門を開かせて攻め滅ぼした。もちろん内通者は歩き巫女が床技・閨房術(けいぼうじゅつ)で調略した助平だ。
次に日置城の織田忠寛を囲んだが容易く降伏して来た。
次に植田城の横地秀次を囲み、織田忠寛を降伏の使者に送ると容易く降って来た。
続いて上野城の下方左近貞清を囲んだが、想定どり頑強に降伏を拒んだ。だから予定通り抑えの兵を置いて次の城に向かった。
次に織田信次の守る守山城を囲もうとしたが、織田信次は早々に逃亡して守山城は空城になっていた。なので守山城を楽々接収して、守備兵を置いて次の小幡城跡に向かった。
小幡城跡に入って城を修築する兵を置き、本軍は川村南城に進んだ。
川村南城の水野右京進清忠は、織田忠寛・横地秀次の2人を使者に送ると容易く降伏して来た。
次に牧長義が小林城に移ったため廃城になっていた川村北城跡に入った。そして小幡城跡と同じように、修築する兵を置き龍泉寺城跡の入った。
龍泉寺城は織田信勝が築いた城だが、信勝が信長に対して謀反を起こし稲生ヶ原合戦で負け、その後で再度謀反を起こそうとして殺された為廃城になっていた。内政と防衛の拠点とすべく、龍泉寺城跡も修築する兵を置いて次に向かった。
次いで全軍をもって新居城の水野雅楽頭を囲んだ。そして水野右京進清忠・織田忠寛・横地秀次を降伏の使者として送った。
「雅楽頭殿、ここは義直様に降られよ、そして一族一門の安泰を図られよ。」
「だがな右京進殿、今川の酷薄・猜疑心による処罰は熾烈でござろう。今は許されても、尾張が安定すれば山口教継殿・教吉殿のように殺されるのではないか?」
「それは大丈夫だ、我らが奉じるのは義直様じゃ、義元様でも氏真様でもない。」
「それは義直様を奉じて今川を乗っ取ると言う事か?」
「そうではない、だが我らは義直様の配下になるから庇っていただける。義直様にしても、今川の家督に欲がないはずがない。いや、3人もの子を殺されている井伊直平殿が義元殿を恨んでいないはずがないのだ。」
「3人の子?」
「城に入っていた陣女郎は噂していたそうなのだが、嫡男を野伏に変装させた今川の手の者に殺され、次男三男も謀反の疑いをかけられ切腹させられているそうだ。」
「だから言わんこっちゃない、今川など信じると碌な事が無いのだ、3人とも今川になど降らずこの城に残られてはどうか?」
「一族郎党が人質になっている、城地を捨てて落ち目の信長に再度寝返るなど有り得ないよ。」
「だが今川よりもましであろうよ。」
「だから今川ではない、南朝の井伊に降るのだよ。」
「う~ん、だがな~」
「なあ雅楽頭殿、尾張・三河・遠江の国衆・地侍が揃って義直様を奉じたら、駿河だけの今川など恐ろしくはないのではないか?」
「それはそうなのだが、3国全ての国衆・地侍が力を合わせるなど有り得ないだろう。」
「だが少なくとも尾張1国の国衆・地侍は全て味方につくだろう、落ち目の信長や猜疑心が強く酷薄な義元殿や氏真殿に降るはずがない。それに三河の松平元康殿と実家の井伊家、親戚の関口家・瀬名家・新野家は味方につくぞ。」
「確かにそれはそうだな。」
「先程の噂の続きでは、義直様の母君・直虎様は散々今川館で虐められ、義直様共々何度も殺されかけているとも言う。このまま尾張に根をおろし、駿河や遠江には帰らないとの話だ。」
「確か那古屋城も、今川氏親殿が築かれ今川氏豊殿が守っておられた。義直様が今川家を継いで、安心して御仕え出来るのならなによりではあるな。」
「そうだ、それにそうなれば我らが義直様の側近になれる可能性もある。氏真殿が当主である限り我らは外様で扱いは悪い、だが義直様が当主になれば、氏真殿の側近衆・駿河衆は粛清されるか遠ざけられる。」
「貴殿たちはそれを狙っておられるのか?!」
「雅楽頭殿、どうせなら大きく夢を見ようではない。信長殿に忠誠を誓って討ち死にするのも武士かも知れないが、尾張・三河・遠江・駿河に跨る大大名の下で立身出世を望むのも武士ではないのか?」
「分かった、降ろう。」
水野雅楽頭が降ったことで新居城・大森城が義直の配下に入った。
次に義直は、米田城の簗田政綱に水野雅楽頭・水野右京進清忠・織田忠寛・横地秀次の4人を降伏の使者として送り込み配下に組み込んだ。そして日が暮れる前に那古屋城に戻り、長い1日を終えた。
「母上様、次は上野城の下方左近貞清の調略でございますか?」
「忠義の勇者です、調略に応じるとは思えません、ですがどうしても義直様の配下に欲しい武辺者です。」
「生け捕りにするのですか?」
「信長を討ち取るまで包囲しておきましょう。」
「それほどまでして私の配下に迎えたい武辺者なのですね?」
「そうですよ。」
「植田城の横地秀次は、我らの勢力範囲に孤立しているのですね?」
「そうです、上手く調略出来れば支城の猪子石城も降るでしょう。」
「米田城の簗田政綱も調略でございますか?」
「最初はそれでいいでしょう、降らぬようなら攻め滅ぼしましょう。」
「分かりました、大森城の水野雅楽頭も同じで宜しいですか?」
「そうですね、そうしましょう。」
「小林城の牧長清の調略は難しいでしょうか?」
「そうですね、斯波義銀の従兄弟で織田信長の妹婿・義兄弟です、易々と降るとは思えません。4千石の領地を持っていますし、最悪攻め滅ぼして義直様の蔵入り地といたしましょう。ですが一応使者だけは送っておいて損はないでしょう。」
「あとは日置城の織田忠寛ですね、織田一門ですが素直に降るでしょうか?」
「応じなければ攻め滅ぼせばいいのです。順番から言えば最初に攻めるべきはこの城ですから、見せしめの為にも容赦する事はありません。」
「分かりました、まずはこの辺りから始めます。」
『日置城外』
義直は1万兵を率いて那古屋城を出陣した。最初に小林城の牧長清を包囲したが、素直に降伏に応じなかったので城内の内通者に城門を開かせて攻め滅ぼした。もちろん内通者は歩き巫女が床技・閨房術(けいぼうじゅつ)で調略した助平だ。
次に日置城の織田忠寛を囲んだが容易く降伏して来た。
次に植田城の横地秀次を囲み、織田忠寛を降伏の使者に送ると容易く降って来た。
続いて上野城の下方左近貞清を囲んだが、想定どり頑強に降伏を拒んだ。だから予定通り抑えの兵を置いて次の城に向かった。
次に織田信次の守る守山城を囲もうとしたが、織田信次は早々に逃亡して守山城は空城になっていた。なので守山城を楽々接収して、守備兵を置いて次の小幡城跡に向かった。
小幡城跡に入って城を修築する兵を置き、本軍は川村南城に進んだ。
川村南城の水野右京進清忠は、織田忠寛・横地秀次の2人を使者に送ると容易く降伏して来た。
次に牧長義が小林城に移ったため廃城になっていた川村北城跡に入った。そして小幡城跡と同じように、修築する兵を置き龍泉寺城跡の入った。
龍泉寺城は織田信勝が築いた城だが、信勝が信長に対して謀反を起こし稲生ヶ原合戦で負け、その後で再度謀反を起こそうとして殺された為廃城になっていた。内政と防衛の拠点とすべく、龍泉寺城跡も修築する兵を置いて次に向かった。
次いで全軍をもって新居城の水野雅楽頭を囲んだ。そして水野右京進清忠・織田忠寛・横地秀次を降伏の使者として送った。
「雅楽頭殿、ここは義直様に降られよ、そして一族一門の安泰を図られよ。」
「だがな右京進殿、今川の酷薄・猜疑心による処罰は熾烈でござろう。今は許されても、尾張が安定すれば山口教継殿・教吉殿のように殺されるのではないか?」
「それは大丈夫だ、我らが奉じるのは義直様じゃ、義元様でも氏真様でもない。」
「それは義直様を奉じて今川を乗っ取ると言う事か?」
「そうではない、だが我らは義直様の配下になるから庇っていただける。義直様にしても、今川の家督に欲がないはずがない。いや、3人もの子を殺されている井伊直平殿が義元殿を恨んでいないはずがないのだ。」
「3人の子?」
「城に入っていた陣女郎は噂していたそうなのだが、嫡男を野伏に変装させた今川の手の者に殺され、次男三男も謀反の疑いをかけられ切腹させられているそうだ。」
「だから言わんこっちゃない、今川など信じると碌な事が無いのだ、3人とも今川になど降らずこの城に残られてはどうか?」
「一族郎党が人質になっている、城地を捨てて落ち目の信長に再度寝返るなど有り得ないよ。」
「だが今川よりもましであろうよ。」
「だから今川ではない、南朝の井伊に降るのだよ。」
「う~ん、だがな~」
「なあ雅楽頭殿、尾張・三河・遠江の国衆・地侍が揃って義直様を奉じたら、駿河だけの今川など恐ろしくはないのではないか?」
「それはそうなのだが、3国全ての国衆・地侍が力を合わせるなど有り得ないだろう。」
「だが少なくとも尾張1国の国衆・地侍は全て味方につくだろう、落ち目の信長や猜疑心が強く酷薄な義元殿や氏真殿に降るはずがない。それに三河の松平元康殿と実家の井伊家、親戚の関口家・瀬名家・新野家は味方につくぞ。」
「確かにそれはそうだな。」
「先程の噂の続きでは、義直様の母君・直虎様は散々今川館で虐められ、義直様共々何度も殺されかけているとも言う。このまま尾張に根をおろし、駿河や遠江には帰らないとの話だ。」
「確か那古屋城も、今川氏親殿が築かれ今川氏豊殿が守っておられた。義直様が今川家を継いで、安心して御仕え出来るのならなによりではあるな。」
「そうだ、それにそうなれば我らが義直様の側近になれる可能性もある。氏真殿が当主である限り我らは外様で扱いは悪い、だが義直様が当主になれば、氏真殿の側近衆・駿河衆は粛清されるか遠ざけられる。」
「貴殿たちはそれを狙っておられるのか?!」
「雅楽頭殿、どうせなら大きく夢を見ようではない。信長殿に忠誠を誓って討ち死にするのも武士かも知れないが、尾張・三河・遠江・駿河に跨る大大名の下で立身出世を望むのも武士ではないのか?」
「分かった、降ろう。」
水野雅楽頭が降ったことで新居城・大森城が義直の配下に入った。
次に義直は、米田城の簗田政綱に水野雅楽頭・水野右京進清忠・織田忠寛・横地秀次の4人を降伏の使者として送り込み配下に組み込んだ。そして日が暮れる前に那古屋城に戻り、長い1日を終えた。
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