侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全

第29話

「王弟であり、商館長でもあるセオドア殿下が非を認めてくださったのですから、以前から請求している賠償金は直ぐに支払って下さるのですよね。
明日にでも御持ちいただけない場合は、大使館と商館は財産ごと接収させていただきます。
ライアン王子とセオドア王弟には、御不自由をおかけすると思いますが、全ては貴国の商人の悪事のせいと諦めてください」

セオドアも怒りと憎しみで顔を真っ赤にしていますが、この場の誰もが二人を馬鹿にして嘲笑を浮かべています。
ここにいる他国の代表は、全員外交の専門家です。
戦争よりも外交で他国を負かして、母国に利益をもたらす専門家なのです。
どうしても戦争になってしまう場合でも、実際に戦いになる前に、極力外交で有利な状況を作り出そうと身命を賭している者達ばかりです。

そんな外交の専門家から見れば、二人の行いは唾棄すべき行為です。
まあ元々は、こんな愚かな人間を送って来た、国王や王国首脳部が悪いのです。
ですが、この後何の手も打たなければ、今度は私が唾棄されてしまいます。
しっかりと、ゲラン王国と敵対しても大丈夫な状況を作りましょう。
まあ、既に作っているから、あのような厳しい言葉を吐けたのですが。

「ガブリエル王子。
先日話していた貿易交渉を締結しましょう。
恐らくゲラン王国とは国交を断絶することになります。
ですが、軍事同盟についてはもう少し話し合いたいですね。
今の条件では、我が国の利が少ないです」

「姫様は交渉がお上手ですね。
ですが私も国を代表して来ております。
あまりに自国に不利な条件を飲む事はできません。
別室で話し合うのは望む所です」

「皆様、急な事で申し訳ありませんが、御覧の通りの状況で、少々席を離れさせていただきます。
あしからずご了承ください。
それと、ハンザ公爵とも後日不可侵条約について話し合いたいと思っています。
御願いできるのでしたら、今からレイスリーと条件のすり合わせをしておいて欲しいのですが、宜しいでしょうか?」

「結構でございます。
お忙しい姫様の御負担を軽減すべく、レイスリー宮中伯と話し合わせていただきましょう」

さて、私の爆弾発言で、会場中が水を打ったような静けさになっています。
最初の発言で、マイヤー王国とゲラン王国の会戦が回避されるのか、それとも我が国を巻き込んだ多国間戦争になるのか、見極めようとしていた各国代表ですが、それにドレイク王国がどう絡んでくるのかまで調べる必要が出てきましたからね。
私の発言がハッタリなのか真実なのか、今日から情報戦が激しくなるでしょう。

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