侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全

第4話

「そうでございます。
国王陛下。
王妃殿下。
王太子殿下には、教会が祝福を与えてくださっておられます。
王家は神に祝福されているのです。
もう貴族などに遠慮する必要はないのです!」

なるほど。
そういう事でしたか。
教会が王家に味方したのですね。
父上様が教会への寄付を拒否されたのが許せなかったのでしょう。
ですがこれはやり過ぎましたね。

教会は、神のため貧しい者のためと、寄付を強要します。
しかし父上様に言わせれば、寄付の九割が神官の懐に入っているそうです。
常日頃から、教会に寄付するくらいなら、自分で貧しいモノに分け与えると公言されておられました。
もっとも、ホワイト侯爵領に貧しい者などいませんが。

「おのれ!
この姦婦め!
よくもリアムを誑かしおったな!
捕まえろ!
早くこの女狐を捕まえろ!」

国王陛下が激怒しておられます。
当然でしょう。
確かに教会は力を持っていますが、ホワイト侯爵家ほどではありません。
ホワイト侯爵を敵に回したら、金銭的支援が止まるだけではすみません。
人間が生きていくの絶対に必要な、塩が止まるのです。

ベイリー王国は、国土のほとんどが海と面していません。
唯一海と面しており、塩田で塩を作っているのが、ホワイト侯爵なのです。
他国から岩塩を輸入すると言う方法もありますが、かなり割高になります。
それに他国が相手だと、ホワイト侯爵のように、塩代金を踏み倒す事などできません。
もっとも王家は、借りているだけだと言うでしょう。

国王陛下と王妃殿下は、私が王太子殿下に嫁ぐ持参金として、莫大な財貨が入ると当てにいていたのでしょう。
今までの借財も、私と王太子殿下の間に生まれた子が王位に就くことで、踏み倒せると計算していたのでしょう。
ですが、事ここに至っては、絶対に返して頂きます。

それと何より許せないのが、王太子殿下と教会です。
私を蔑ろにする事でホワイト侯爵家を怒らせて、反乱を起こさせてから討伐するつもりだったのでしょう。
多くの貴族家が出陣を拒んでも、王権と教会の権威で、むりやり出陣させられると、過信しているのでしょう。

「国王陛下!
それは許されませんよ。
いかに国王陛下であろうと、私に指一本触れる事は許されないのです」

マリー嬢が不遜な事を口にしました。
何か切り札を持っているのでしょうか?

「なんだと?!
なにを言っておる!
気でも触れたか?
たかだが子爵家の娘が、余に逆らうと言うか!」

「無礼はなりませんぞ。
父王陛下。
私の婚約者となったマリー嬢は、聖女なのです!
教会が認定した、聖なる女性なのです!」

王太子が得意顔で話しています。
そうですか。
その手で来ましたか。
これはちょっと厄介かもしれません。

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