第108話

「御嬢様、野菜が次々と収穫できております。
領民や犯罪者奴隷に与える野菜を買う必要がなくなりました！」

全て中級精霊達の御陰です。
彼らは精霊のつながりで世界中の事を知っています。
この大陸の事だけでなく、全世界の知識を持っているのです。
普通の中級精霊はそんな貴重な知識を人間に教えてはくれません。
下級精霊から中級精霊に成長した特殊な子達だから、私が与えた名を受け入れてくれた子達だから、全てを教えてくれるのです。
いえ、この大陸にないモノまで集めてきてくれるのです。

そんなモノの中に、種蒔きからわずか一カ月や二カ月で収穫できる、多くの野菜がありました。
ホウレンソウ、キュウリ、ピーマン、カブと呼ばれる野菜です。
中級精霊達の話では、獣や魔獣の肉と一緒の食べれば、バランスのよい食事にできるそうです。

もちろん穀物も栽培しています。
作りやすいライ麦や、小麦よりも面積当たりの収穫量の多く作りやすい大麦を中心に栽培しています。
小麦を栽培するのは、難民や犯罪者奴隷を養えるだけのライ麦と大麦が収穫できるようになってからの話です。

「御嬢様。
多くの冒険者が集まっております。
老人に代わって魔境に入らせてはどうでしょう？」

悩みどころですね。
一人当たりの運搬量を考えれば、冒険者や犯罪者奴隷にムク達が狩った獲物の運搬役を任せる方が効率的です。
ですがそうなると、老人達に任せる仕事がなくなってしまいます。

地下用水路に沿って半砂漠を開墾するには体力が必要です。
それに開墾した土地の相続問題もあります。
冒険者が土地を開墾したのなら、子供に継がせることが可能です。
犯罪者奴隷なら、容赦なく取り上げて直轄領にし、小作人を募集すればすみます。
でも老人だと他領に残してきた縁者が相続人だと名乗り出てくるかもしれません。

「その心配は不要でございます。
他領からの難民は全て奴隷として王家王国に届けています。
他領に残っている子供や孫が何を言ってきても、奴隷として開墾したモノだと言い放てばすむことでございます」

私の心配にリリアンが明確に答えてくれました。
確かにそうです。
自分で奴隷として受け入れると言っていながら、忘れていました。
いつか解放してあげようと思っていたので、混乱していたのでしょう。
ですがこれで安心して使うことができます。

「そうでしたね。
うっかりしていました。
では体力と適正に合わせて、適材適所に配属してください。
ただ徒士や騎士を目指してやってきた冒険者には、土地を与えて自力で開墾させてください」

「承りました」