逆行悪役令嬢は改心して聖女になる。

克全

第59話

「御嬢様。
コックスは、御嬢様のためシーモア公爵家のため、新たな役目に励んでおります。
そして見事にその役目を果たしました。
しかしながら過酷な任務のため、少々疲れております。
ですがここで休むと、せっかくの任務達成に傷がつきます。
ここは労いの言葉をかけるだけにしてください」

なるほど、そういう事でしたか。
表に出せない陰の仕事か、目立たないけど大切な裏方仕事をしてくれたのですね。

「そうでしたか、分かりました。
コックス、よくぞ見事に役目を果たしてくれました。
コックスの御陰で安心して過ごす事ができます。
これからも頼みましたよ」

「過分な御言葉恐れ入ります。
これからも忠誠を尽くさせていただきます」

そうは言ってくれましたが、心に迷いがあるようです。
裏方仕事ではなく、陰の仕事を任されたのですね。
リリアンに見込まれたのでしょう。
リリアンが陰の仕事を統括していたとは、領地に帰る旅程で襲われるまで、全く気がつきませんでした。
本当に何も見えていませんでしたね。

「リリアン。
コックスは狩りに同行させた方がいいですか?
それとも育児をしている魔犬達の世話をさせた方がいいですか?」

「それは御嬢様がムクに確認してくださいますか。
ムクが一番状況を分かっていると思われます」

コックスがハッとしています。
何か魔獣と魔獣使いに関する問題があるのですね。
絆に関係するのなら、大問題です!
王都で初めて会った時の話から考えると、陰の仕事に魔犴を使ったのですね!
それは、コックスが魔獣使いとしてこれからも生きていけるかどうかの、一大事ではありませんか!

「分かりました。
ムク、どうすべきですか?」

常に、いついかなる時も、私の側を離れないムクとアズ、私を護るように、少し離れた場所に陣取る魔犴と銀狼がいます。
ムクが即座に反応して、かつての主であるコックスに近づき、頭を足にこすりつけています。
その後で私の方に頭を向けて、訴えてきました。

「一緒に狩りに行った方がいいようですね。
特に二匹の魔犴には、自由にデビル魔境を駆けさせた方がいいようです。
コックスとの絆は……
少し細くなっているようですが、切れる心配はないようですね」

「よかった!
ありがとうございます。
御嬢様」

コックスの陰りはやはり絆の心配でしたか!
今の私には痛いほど分かります。
魔獣との絆が細くなる事は、生死にかかわる大問題です。
生死にかかわらなくても、自分の生き様を変えねばならない大問題です。
忠誠のためとはいえ、失うのは怖いでしょう。
主君とパートナーの魔獣、どちらかを選べと言われたら、今の私なら魔獣を選びます。

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