逆行悪役令嬢は改心して聖女になる。
第51話リリアン視点
メイソン殿がとても健気でいじらしいです。
御嬢様の役に立ちたいと、細々とした事まで自分でやろうとします。
ムク達が倒した月熊魔獣も、心臓が止まると血を抜くのが難しいので、手負いで一番危険な時にもかかわらず、第二騎士団員を指揮して解体に向かいます。
普段から狩りと団員強化で慣れているとはいえ、御嬢様に対するおどおどした態度とは一変する練達の指揮官でした。
さすがルーカス様が幼い頃から鍛え上げられただけはあります。
「後足の腱は断たれているようだが、念の為もう一カ所斬れ。
前足は二カ所斬って動けないようにしろ。
殺すなよ!
止めは姫様に刺して頂くのだ」
本当にメイソン殿は健気でいじらしいです。
御嬢様の身体が丈夫になるように、月熊魔獣の止めを御嬢様が刺せるように、安全確保に細心の注意を払っています。
それに少しでも月熊魔獣の商品価値を高めることも考えています。
名誉と戦闘のことしか考えない愚かな騎士ではなく、領主として収入を増やす事も考え実行できるようです。
さすがルーカス様が幼い頃から鍛え上げられただけはあります。
第二騎士団の精鋭ならば、月熊魔獣を何度も狩った経験があるのでしょう。
見事な手際です。
丁寧に血抜きされた月熊魔獣の肉は滅多に市場に出回りません。
第二騎士団が狩った時だけ競売にかけられるだけです。
ですがその時も、公爵家や公爵家の有力家臣が競り落とすので、一般領民はもちろん富豪と呼ばれる商人でも手に入れるのが難しい幻の肉なのです。
まあ、血抜きされていない月熊魔獣の肉ならば手に入るのですが。
「姫様。
御願いいたします」
「ありがとう、メイソン。
御陰で安全に月熊魔獣に止めをさせます」
御嬢様が何の躊躇いもなく月熊魔獣に近づかれます。
王都を出た時とは比べ物にならないしっかりとした足取りです。
寝たきりだった時の御嬢様の事を思いだすと、こらえきれず、不覚にも涙がこぼれそうになります。
ですがそんな情けない姿を御嬢様に見せる事などできません。
私は常に御嬢様が頼れる存在であらねばならないのです。
今も万が一の事を考えて、御嬢様の後ろに影のように従うのです。
今の御嬢様にはムク達がいてくれるのは分かっています。
私の邪魔にならないように、前方を中心に左右に分かれて御嬢様を護っています。
正直な事を言えば、少し嫉妬があります。
ムク達が来るまでは、御嬢様を護るのは私でした。
何かあれば、御嬢様はまず最初に私に眼を向けられたものです。
ですが今は、私に眼を向けられる前に、以心伝心でムク達と会話しておられるのが分かってしまいます。
胸が掻き毟られるような、何とも言えない痛みと言うか違和感と言うか、嫌な感覚が沸き起こってしまいます。
ですがムク達は、最も大切な御嬢様の背後を私に譲っています。
それが御嬢様の私への信頼だと思うと、湧き上がるような喜びもあります。
その場を誰にも奪われないように、これからも努めるしかありません。
御嬢様の役に立ちたいと、細々とした事まで自分でやろうとします。
ムク達が倒した月熊魔獣も、心臓が止まると血を抜くのが難しいので、手負いで一番危険な時にもかかわらず、第二騎士団員を指揮して解体に向かいます。
普段から狩りと団員強化で慣れているとはいえ、御嬢様に対するおどおどした態度とは一変する練達の指揮官でした。
さすがルーカス様が幼い頃から鍛え上げられただけはあります。
「後足の腱は断たれているようだが、念の為もう一カ所斬れ。
前足は二カ所斬って動けないようにしろ。
殺すなよ!
止めは姫様に刺して頂くのだ」
本当にメイソン殿は健気でいじらしいです。
御嬢様の身体が丈夫になるように、月熊魔獣の止めを御嬢様が刺せるように、安全確保に細心の注意を払っています。
それに少しでも月熊魔獣の商品価値を高めることも考えています。
名誉と戦闘のことしか考えない愚かな騎士ではなく、領主として収入を増やす事も考え実行できるようです。
さすがルーカス様が幼い頃から鍛え上げられただけはあります。
第二騎士団の精鋭ならば、月熊魔獣を何度も狩った経験があるのでしょう。
見事な手際です。
丁寧に血抜きされた月熊魔獣の肉は滅多に市場に出回りません。
第二騎士団が狩った時だけ競売にかけられるだけです。
ですがその時も、公爵家や公爵家の有力家臣が競り落とすので、一般領民はもちろん富豪と呼ばれる商人でも手に入れるのが難しい幻の肉なのです。
まあ、血抜きされていない月熊魔獣の肉ならば手に入るのですが。
「姫様。
御願いいたします」
「ありがとう、メイソン。
御陰で安全に月熊魔獣に止めをさせます」
御嬢様が何の躊躇いもなく月熊魔獣に近づかれます。
王都を出た時とは比べ物にならないしっかりとした足取りです。
寝たきりだった時の御嬢様の事を思いだすと、こらえきれず、不覚にも涙がこぼれそうになります。
ですがそんな情けない姿を御嬢様に見せる事などできません。
私は常に御嬢様が頼れる存在であらねばならないのです。
今も万が一の事を考えて、御嬢様の後ろに影のように従うのです。
今の御嬢様にはムク達がいてくれるのは分かっています。
私の邪魔にならないように、前方を中心に左右に分かれて御嬢様を護っています。
正直な事を言えば、少し嫉妬があります。
ムク達が来るまでは、御嬢様を護るのは私でした。
何かあれば、御嬢様はまず最初に私に眼を向けられたものです。
ですが今は、私に眼を向けられる前に、以心伝心でムク達と会話しておられるのが分かってしまいます。
胸が掻き毟られるような、何とも言えない痛みと言うか違和感と言うか、嫌な感覚が沸き起こってしまいます。
ですがムク達は、最も大切な御嬢様の背後を私に譲っています。
それが御嬢様の私への信頼だと思うと、湧き上がるような喜びもあります。
その場を誰にも奪われないように、これからも努めるしかありません。
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