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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第180話キャンプ

ビラン冒険者ギルド本部:食堂

「あの、本当に好いのでしょうか?」

「なにがだい?」

「街の人達を殺してしまう事です」

「うん? 逃げたい人は逃げられるよ」

「でも、過去に罪を犯した人は、街を出られないんですよね」

「ああ、そうだよ」

「産まれてから一度も罪を犯さなかった人など、ほとんどいないと思うんです。今普通に暮らしているのなら、過去の罪は見逃してあげられないでしょうか?」

「昨日旅の一家を皆殺しにして、その財産全てを奪った人間を許せと言うのかい?」

「そんな事は言いませんが」

「ではオードリー、どれくらい昔の罪ならなかったことになるんだい?」

「それは・・・・・」

「今回の件はね、ギルドマスターが公正な判断をすれば、大事(おおごと)にする気は無かったんだよ」

「はい、それは理解しています」

「ここで手心(てごころ)を加えたら、俺や俺の大切な人達に何をやっても報復されないと思われてしまう。そんな事になったら、オードリーやオードリーと俺の間に産まれる子供も、将来狙われる可能性があるんだ。ここは断固として、報復をしなければならないんだよ」

「ミノル様! 私の事を考えてくださっていたんですか?! それに私達の子供の事も、考えてくださっているんですね!」

「当たり前だろ、一生護る気がない女性を抱いたりしないよ。それに抱く以上は、真剣に子供の事も考えているよ」

「ありがとうございます、うれしいです」

あ~、こんなラブラブな場面にする気はなかったんだけどな。食堂にいる連中も、どう言う顔をすればいいのか困っているよ。これから俺を信じてくれる人間を集めて、街を出るつもりなんだけど、いつ雰囲気を変えようか?





ローファン王国:ビラン郊外の森の中

「一時的にここをキャンプ地にするから、好きな場所に寝床を作ってくれ」

「「「「「はい」」」」」

俺が助けたいと思った人間と、新たに雇う事にした子供達を引き連れて、ビラン郊外の森に入った。アグネス達が秘密キャンプ地にしているのと同じ森だが、秘密キャンプ地よりはずっとビランに近い場所だ。

「俺が魔法で結界を張っているから、雨風はもちろんモンスターも入ってこない。だから安心してくれていいよ」


「「「「「はい」」」」」

子供達が元気に返事してくれるが、迷いながらついて来てくれて大人達は、まだ不安や疑問があるのだろう、返事をしてくれる人が少ない。だが彼らが躊躇(ちゅうちょ)するのも当然で、普通はこんな広大な範囲に結界を張れはしない。

「まずは何をするのも腹ごしらえが大切だから、作り置きで悪いが料理を出すね。まずはオークの丸焼きに、オークのレバーシチューとマタギ汁だ」

「「「「「うぁ~、すげぇ~」」」」」

子供達が無条件に喰いついた!

普段ロクな物を食べていなかったのも大きいが、なんと言っても丸焼きは食欲を沸き立てる料理だ。特に子供にはイベント感があって、とても喜ばれるのは今までの経験で分かっていた。

一方大人達はそれほど喜んでいないが、これは枯れた感性の問題もあれば、狩りで野外料理をした経験も多いから、丸焼きくらいでは気分が盛り上がったりしないのだろう。

「次はイワシホエールを解体しながらバーベキューをしますが、協力してくださる方はおられますか?」

「解体はミノル殿が手本を示してくれるのか?」

「はい、解体は僕が魔法を駆使しながらやりますから、手伝ってくださる方には焼いてもらいたいんです」

「イワシホエールの解体は、ミノル殿がイワシホエールを売り出すと聞いてからずっと見てみたかったんだ。これはいい機会だから、今後のためにも手伝わせて欲しい」

「私も御願します」

「俺も手伝わせてくれ」

「僕も手伝います」

ビランの街を出るにあたって、俺と行動を共にしてくれた大人達には、ギルドに所属しながら俺の焼酎委託販売をしてくれていた者達がいた。他に同行してくれた大人達は、俺が委託販売している「はなたれ焼酎」をこよなく愛するドワーフ族に、焼酎を愛する大酒飲み達だ。

俺と利害関係が一致する酒飲みたちの動向は予測できたのだが、テューレ殿をはじめとする鑑定官と解体職員が同行してくれたのには驚いた。テューレ殿は公明正大な方だから、そんな人に信用されたのは正直うれしい。そんなテューレ殿が街を出る決断をしたからこそ、多くの鑑定官と解体職員も同行を決断してくれたのだろう。

だが同行を申し出た人間全てが、街を出られた訳ではない!

俺が正邪鑑定魔法と結界魔法を施した城門は、俺と同行していようとも邪心を持つ者は通過できない。過去に悪行を働いていた冒険者やギルド職員は、なにをどうしようと城門を通過することができなかった。

その現然(げんぜん)たる様を見て、同行していた大人も子供も、俺の言葉に嘘いつわりがない事を悟ったのだ。大人たちの中には、口には出さないものの、ごまかして街を出ようとしていた人間の悪行を知っていたのだろう。真っ青になって、俺の方をチラチラ見ていた。

実力があるからこそ悪事を働く事ができるし、その悪事を隠すこともできる。そんな強者を前にして、正論が言えないくらいの罪は見逃してあげる。オードリーには多少厳しく言ったけど、それくらいの加減はしてあるのだ。

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