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初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第172話面接

ビラン冒険者ギルド:会議室

「次の方どうぞ」

「はい! 失礼します」

「出身とお名前、レベルと希望職種を教えて下さい」

「はい! マダン街出身のウーライと申します。レベルは9で、希望職種は調理師です」

「今まで料理を作られた経験があるのですか?」

「冒険者だけでは食べて行けず、飯屋でアルバイトしています。一旗揚げたくて、この街に来たんですが、実力が違い過ぎてとても歯が立たず、飯屋でアルバイトばかりしていました。たまにパーティーに参加出来ても、荷物持ちや食事係でした」

「では料理の腕前を見たいので、この材料で実際に料理を作って頂きます。この材料を持って、ギルドの食堂に言って下さい」

「はい、頑張ります」

昨日はオードリーと食事をしたのだが、オードリーも緊張していたのか、飲み過ぎて寝てしまった。俺はその気でいたのだが、飲み潰れた女の子に手を出すことができなかった。

オードリーを部屋まで送り届けたのだが、オードリーのルームメイトであるフィオレンザには、思いっきり冷たい目で見られてしまった。俺だって何の欲望もわかなかった訳では無いが、最初はお互い意識がある時にしたいじゃないか。

朝挨拶に来たオードリーの顔には、明らかに泣きはらしたような形跡がある。いったい俺にどうしろと言うんだ!

(ミノルがヘタレなのだろう)

(セイまで俺を責めるのか?)

(たかが受粉ではないか、獣やモンスターなら交尾でしかないことだ。季節になれば、子孫繁栄の為に行うのが当然なのだ、ミノルのように考え過ぎる事ではない)

(あのなセイ、確かにセイやリュウや白虎には、それほど考えることじゃないのかもしれないよ。だけどさ、ヘタレと言うのは言い過ぎじゃないか?)

(ふむ、確かにそうだな。パートナーを見つけられない、交尾が出来ないのは、そもそも生物として未熟と言うだけの事だ。ヘタレとかそう言う表現は、うむ、正確ではないな)

(なんかもっと落ち込むんだけど)

「ミノル様? 宜しいですか?」

「ああ何だった? 御免、ちょっと他の事を考えていた」

「売店の売り子希望の冒険者が来ていますが、気に入らなければこのまま帰って頂きますが?」

おいおいおい、駆け出しの冒険者が泣きそうになってるよ。ある程度戦えると勘違いして、一獲千金を目指してこの街に来たんだろうけど、全く歯が立たず食うや食わずの生活をしている子だな。

「この子も仮設売店で見習いをしてもらおう」

この子程度の実力だと、本当なら生きてビランにまで辿り着けるはずはないのだけど、運が好いと言うべきか悪いと言うべきか、間違って辿り着いてしまった。周囲は強力な魔獣やモンスターだらけだから、帰りたくなっても元の街に生きて帰りつける保証はない。だからと言って狩りをしようとしても、レベルが低すぎて、強力なパーティーに加えてもらえるはずもない。

「分かりました、先に来た人たちと一緒に、塩を売らしてみます」

だからビランで街の雑用をこなして、僅かなお金を稼いで食いつないでいる子達。

後は力及ばず死んでしまった冒険者の遺族。彼らも独力で狩りなど出来ないし、だからと言って他の街に行っても、必ず食べて行けるとは限らないのだ。

「ああ、それで働きぶりを見てみよう」

領主や冒険者ギルドが、冒険者としての訓練や職業支援してやるのが理想だが、そんなことをしなくても、一獲千金を目指して有力な冒険者が続々やって来る。実力が伴わない人間は、街の最下層で雑用をこなせばいいと考えている。

「ありがとうございます! 頑張って働かせていただきます」

まあ俺も、そんな状況を利用して従業員を集めようとしているから、領主や冒険者ギルドマスターを非難できる立場じゃない。

「ミゼルさん、身体を清潔にさせてから売店まで案内してあげて」

「はい、こちらについて来て、衛生管理の説明をするから、しっかりと覚えてもらいますよ」

「はい、頑張ります」

今回はギルドの会議室を借りて、ギルド所有の宿屋の風呂も利用させてもらって、不衛生な冒険者を身綺麗にする所から始めた。

食中毒など絶対に起こさせる訳にはいかないし、そもそも不衛生で臭い人間が売る売店に客が来るわけがない。まして不衛生な人間が作る料理など、ビランの富裕層が食べに来るはずがないのだ。

確かにビランにも貧民街があるし、今面接に来ている者達はそこに住んでいる。当然そこで売られている食料は、富裕層が捨てた残飯を集めて来た物だから、衛生管理などされてはいない。長年貧民街で暮らしている者に、衛生観念を期待する方が無茶だろう。

そもそも高級料理店を開いたり、高級品を売店で売るのなら、もっと生まれのよい人間を雇う方が、初期教育の時間も費用も節約できる。だがそれでは、俺の不完全な良心回路が疼くのだ。恵まれない人達に手を差し伸べろと、ズキズキキリキリと心が痛むのだ。

「オードリー、今までギルドで委託販売を任せていた職員だけど、給料を5割増しにするから、俺に雇われる気が無いか確認してくれ」

「彼らをギルドから引き抜かれるのですか?」

「ギルドも仕事が増えた分、職員の人員を増やしたのだろう?」

「はい、職員に負担がかかりすぎないように、ミノル様から卸されるお酒を委託販売する人員分を増員しております」

「今日面接した子達の教育係も兼ねるから、結構負担が増えると思う。その分給料を5割増しにするから、ギルド職員を止めて俺の使用人にならないか聞いてみてくれ」

「承りましたが、店はどうされるのですか? まさかギルドとの委託販売契約を破棄される気なのですか?」

「そんな事はしないよ、塩だけじゃなく、色んな街で集めた商品をビランで売りたいのさ」

「それは、商人ギルドに入られると言う事ですか?」

「必要なら入るけど、必要なんだね?」

「はい、ギルド本部で冒険者同士が直接売買する分だけは黙認されておりますが、冒険者が街で商品を売るのなら、商人ギルドにも登録する必要があります」

「俺の酒の売買は、冒険者同士の直接売買と言う事で黙認扱いだったんだな」

「はい、そう言う形になっています。そうでもしないと、ドワーフ族の酒乱が怖いですから」

「なるほどね、それで店の確保だけど、オードリーに任せればいいのかな? それとも、俺が直接交渉すべきなのかな?」

「下交渉は私に任せて下さっても大丈夫ですが、最終的には同席して頂きたいです。それに出来る事なら、ミノル様直々に交渉して頂いた方が、売買代金も各種条件も、私が交渉するより有利になると思われます」

「そうか、正直に言ってくれるんだね」

「ミノル様に嘘偽りが通じるとは思っておりません」

「だったら交渉はするけど、俺も色々忙しいから、めぼしい店は探して置いて欲しい」

「分かりました、冒険者ギルドの伝手も利用して、出来る限り人通りのいい場所を探してみます」

「ありがとう、頼んだよ」

「はい、お任せ下さい」

「それとこれは私用なんだけど、今日も一緒に食事してくれないかな?」

「え? 私とですか?!」

「そうだよ、でも出来れば今日は、酔い潰れずに朝まで一緒にいて欲しいんだ」

「あの、その、それは」

真っ赤になって下を向いている、俺に好意を寄せてくれているんだよな?

(それくらいの事、いい加減理解したらどうだ。季節になって発情している事など、どんな獣やモンスターだって察することが出来るぞ。本能で出来ないと言うのなら、リーサチ魔法で確認すればよかろう)

(セイに人間の恋愛の微妙な機微は分からんよ!)

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