初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第167話スライム

ナーポリ近郊の秘密キャンプ地近くの森

「う~ん、食べ物を粗末にするのはどうにも抵抗があるな」

「何を言っておる、これは狩りの撒き餌ではないか、無駄ではない」

「まあリュウの言う通りなんだろうけど、どうにもなぁ~」

「ほれ、直ぐに集まって来たではないか」

リュウが偉そうに言うように、リュウと白虎が食べ残した野菜に、多くの魔獣やモンスターが殺到している。

だが最初に集まったのは、当然ながら森の掃除屋とも言える弱小の魔獣やモンスターだった。小型魔虫やスライムが、それこそ押し合い圧し合い集まるのだが、その姿は少々恐怖感を感じるほどだった。

「リュウ、俺は虫は食べたくないんだがな」

「何を言っておる、あれだけ魔虫が集まれば、それを餌にしている魔鳥や魔獣にモンスターも集まってくる」

「まあ俺達は気配を隠しているから、俺達を恐れて来ないと言う事はないだろうが、こんな街の近くに強力な魔獣やモンスターがいるかな?」

「ミノルよ、何を抜けたことを言っておる。大切な食べ物を餌にした事で、思考力が低下したのか?」

「セイまで俺を馬鹿にするのか?」

「馬鹿にするわけではないが、あくまでも試しではないか。ここで強力な魔獣やモンスターが集まらなくても、そこそこの魔獣やモンスターが集まれば成功であろう」

「そうか、そうだな、勿体無い病に捕らわれていたかもしれないね」

「そうだぞ、余が直々に教えてやった方法にケチをつけるなど、普通の人間なら殺している所だ」

「はいはいはい、喰いしん坊さんは黙ってな」

「うぬぅぅぅぅぅ、誰が喰いしん坊さんだ!」

「違うのか? 違うなら開拓村で食べたらいいじゃないか」

「まぁまぁまぁ、リュウ様も主もそれくらいにして、何か凄く大きいスライムが現れて、餌場を荒らし始めちゃいましたよ。あいつをどうにかしないんですか?」

「ちぃ! 始末の悪い奴が現れたな」

「確かに大きいスライムだが、あれが始末に悪いのか?」

「そうだな、余からすれば歯牙にもかけないような弱小モンスターだが、人間から見れば始末に負えないモンスターであろうな」

「何故だい?」

「表面を含めて身体の98%が水分で出来ており、小型ならともかく人間代の大きさだと、火魔法も打撃系の魔法も効果が低くなる」

「え~と、俺には戦った記憶すらないんだが」

「強者を見分ける本能に優れているから、勝てない相手の前からは素早く逃げるのだ」

「そうか、それで戦った記憶が無いのか」

「例えば火炎系の魔法を使ったとしても、内部にある複数の核全てを破壊する温度まで熱さなくてはならぬ。だが大型のスライムになると、そこまで温度にあげるのに大量の魔力を必要とするのだ」

「なるほどね」

「それにあれを見てみろ」

「うん? 身体で魔虫や魔獣を包み込んでいるところか?」

「そうだ、ああやって包み込んだ敵に強力な酸をかけ、溶解させてから吸収するのだ」

「それがなんだと、あ? 魔虫の殻の中には結構強力な武器や防具に加工できる奴もいたな」

「ようやくわかったか、人間の武器や防具を、魔虫や魔獣にモンスターや金属製であろうとも、全て溶解して自分の養分にしてしまうんだ」

「ちょっとまてよ、金属をどうやって自分の養分にするんだ?」

「金属結合(きんぞくけつごう)を分離させ、その際にエネルギーやレベル、経験値などを吸収するのだ」

「え~と、俺はそっち方面の知識が乏しくて、全く理解できないんだが」

「金属や魔虫や魔獣、さらにはモンスターを素材にした武器や防具であろうと、使い続ければ摩耗したり破損したりするのは理解しているな」

「ああ、それは理解している」

「だが同時に、使い続けた武器や防具が強化され、レベルが上がるのは理解していたか?」

「いや、全く知らなかった」

「余やセイは当然として、別の世界から来たミノルさえ、戦って相手を倒したらレベルが上がるのだ。武器や防具も、敵を倒せばレベルが上がって当然であろう」

「今それを言われれば当然な気もするが、今までは生物だけにレベルがあるのだと思っていた」

「まあ、セイやミノルは魔法で敵を倒すから、武器や防具のレベルが上がったと言う実感はないだろう。だが普段から来ている衣服は、恐ろしいほどの防御力になっているんだぞ」

「そうなのか?」

俺は慌てて自分の衣服をリサーチしてみたら、なんと防御力と言う表示があって、俺とほとんど変わらないレベルになっていた。

俺はもったいない精神の持ち主だから、肌着を含めて衣服を一切捨てず、クリーンの魔法を使って同じものを使い続けてきた結果だ。流石に肌着は4組を交換しながら使っていたが、普通なら金持ちになった時点で、ドローン配送を活用して使い捨てしていただろう。

もったいない精神に感謝だな!

「それは分かったが、スライムが素材として使えないとしても、経験値は入るのだろう?」

「それならば、経験値が入って素材として高く売れる魔獣やモンスターを倒した方がよかろう。斃したとしても何にも利用できんスライムなど、魔力と体力に加えて武器や防具まで無駄にするのだぞ。いや、命すら失いかねないのだぞ」

「確かにそうだな、俺だってどうせ命を賭けるのなら、高く売れるか美味しく食べれる相手と戦うわ」

「そい言う事だ」

つまりスライムと言うのは、魚釣りで言うところの外道と言うか、餌取りの雑魚だと考えればいいんだな!

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