初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!
第164話商売
エルフ皇国・桐の街:パヴロヴナ
「随分と愉しそうだな」
「そう見えるか?」
「ああ、ビランで酒を売り出した時も、ナーポリの朝市で商売の指揮を執った時も、それなりに嬉しいそうだったが、今はその時以上に楽しそうだ」
「ビランでは冒険者ギルドに卸すだけで、自分が直接商売したわじゃないし、ナーポリでも朝市全体の指揮を執っただけだからね」
「それではミノル、直接客に対応する商売が好きなのか?」
「う~ん、好きかどうかは自分でもわからないけど、逃げ出したいほど苦痛ではないな」
「はっきりせんな」
「そうだな、人間の心はそんなもんだろ、些細な事で揺れ動くのが人間と言うものさ」
「ふむ、脆いものだな」
「そうだな」
俺とセイが小声で話していると、エルフが露店に来て商品を見だした。
「人間、これは美味しいのか?」
「美味しいですよ、肉も魚も使っていませんから、エルフの掟にも触れません」
「だったら材料を言ってみろ」
「まずは山で採れた色んなキノコを煮込んで出汁をとります」
「それで?」
「次に細く切った根菜を加えて火を通します」
「ほう、それで」
「ここで海で採れた海藻を塩漬けにした物と、葉物野菜を加えて一煮立ちさせて完成です」
「ほう、それだけでいいのか?」
「はい、たったこれだけで、とても美味しいスープが出来あがります」
「で、値段は幾らだ」
「海藻を使っているにもかかわらず、だった小銅貨55枚です」
「ふむ、高くはないが、不味ければどれほど安くてもいらんぞ」
「小銅貨55枚くらい、エルフの旦那には大した金額じゃないでしょう。ここは試しに飲んでみて下さいよ」
「そうだな、不味ければ不味いで笑い話にも出来るな。だが支払いに大銅貨や小銀貨を使っても大丈夫なのか?」
「大丈夫でございますよ」
「そうか、だったらこれで支払おう」
初めての客になったエルフは、小銀貨1枚を出してきたので、俺は1番大金を保有している、ローファン王国の大銅貨4枚と小銅貨5枚でお釣りを渡した。
「ふむ、見た事のない意匠の貨幣だが、純度は正確なようだな」
「はいはい、門番をされていた方に、どこの国の貨幣であろうと、エルフなら本当の価値を見抜けるとお聞きしました」
「まあそう言う事だ、見た事のない国の貨幣だが、純度と重さが同じなら何の問題も無い」
「それは助かります、ささ、熱いうちに飲んでみて下さい」
「そうか、お、美味いではないか! こんな味のスープは初めて食べるぞ!」
「そうでしょ、作り方も簡単ですし、キノコも根菜も葉物野菜も、エルフの村なら簡単に手に入るでしょう?」
「そうだな、この村特産の野菜を入れれば、もっと美味しくなるかもしれんな。だがこの海藻とやら、いったいいくらで売っているんだ?」
「今飲まれたスープに入っている海藻10人前が入って、たった小銀貨1枚です。ただキノコや野菜は別に買ってもらう事になります」
「ふむ、だったら10人前を10個、大銀貨1枚で売ってもらおうか」
「へい、ありがとうございます」
「私にも1杯飲ませてくれ」
「俺もだ、俺にも1杯飲ませよ」
「はいはい、1杯小銅貨55枚でございますが、それで宜しいですか?」
「はいよ、これでいいだろう、早く飲ませろ」
「あたしが先だよ、私から渡しなさい」
最初のエルフの嘘偽りない賛辞が利いたのか、遠巻きに見ていたエルフが次々とわかめスープを買ってくれた。一口飲んでくれさえすれば、海藻など食べた事のないエルフには、衝撃的な味だろう。
1杯飲んだエルフは、必ず塩漬けわかめ10人前を1つは買ってくれた。中には試食用に作ったわかめスープを買って、熱々のままアイテムボックスに仕舞うエルフもいた。
試食用のわかめスープも、ナーポリで作らせた塩漬けわかめも、わずか1時間で売り切れてしまった。後は仕方なく、同じくナーポリで作らせた塩を売る事にしたが、そちらも飛ぶように売れてくれたので、ナーポリの主力商品としての目途がついた。
さすがに既存の商会や商人では、エルフの村まで売りに来るのは難しいかもしれないが、それは俺が直接来れば済むことだ。いや、商魂たくましい商人ならば、魔法袋一杯に塩漬けわかめを詰め込み、この村まで来る可能性は有る。
「ミノル、本当に楽しそうだったな」
「そうか? ふむ、そうかもしれないな」
「狩りをするよりも、こうやって商売をしながら村々を巡る方が、ミノルは幸せなのかもしれないな」
「確かにそうかも知れないね、国や街の権力争いに巻き込まれるのは真平ごめんだし、責任を背負込むのも気が重い」
「だったら、このまま商人になったらどうだ?」
「そうだな、仕入れの問題もあるから、冒険者と商人の兼業をするのもいいかもしれないな」
「そうしろ、元々我が巻き込まなければ、ミノルは平和な日々を送っていたのだ。人間を助けようと無理して、身心を追い込むこともあるまい」
「そうだな、今まで抱え込んだ物を放り出すのは嫌だが、いずれは全部独り立ちしてくれるだろう。もう新たな揉め事に、首を突っ込むのは止めるよ」
「随分と愉しそうだな」
「そう見えるか?」
「ああ、ビランで酒を売り出した時も、ナーポリの朝市で商売の指揮を執った時も、それなりに嬉しいそうだったが、今はその時以上に楽しそうだ」
「ビランでは冒険者ギルドに卸すだけで、自分が直接商売したわじゃないし、ナーポリでも朝市全体の指揮を執っただけだからね」
「それではミノル、直接客に対応する商売が好きなのか?」
「う~ん、好きかどうかは自分でもわからないけど、逃げ出したいほど苦痛ではないな」
「はっきりせんな」
「そうだな、人間の心はそんなもんだろ、些細な事で揺れ動くのが人間と言うものさ」
「ふむ、脆いものだな」
「そうだな」
俺とセイが小声で話していると、エルフが露店に来て商品を見だした。
「人間、これは美味しいのか?」
「美味しいですよ、肉も魚も使っていませんから、エルフの掟にも触れません」
「だったら材料を言ってみろ」
「まずは山で採れた色んなキノコを煮込んで出汁をとります」
「それで?」
「次に細く切った根菜を加えて火を通します」
「ほう、それで」
「ここで海で採れた海藻を塩漬けにした物と、葉物野菜を加えて一煮立ちさせて完成です」
「ほう、それだけでいいのか?」
「はい、たったこれだけで、とても美味しいスープが出来あがります」
「で、値段は幾らだ」
「海藻を使っているにもかかわらず、だった小銅貨55枚です」
「ふむ、高くはないが、不味ければどれほど安くてもいらんぞ」
「小銅貨55枚くらい、エルフの旦那には大した金額じゃないでしょう。ここは試しに飲んでみて下さいよ」
「そうだな、不味ければ不味いで笑い話にも出来るな。だが支払いに大銅貨や小銀貨を使っても大丈夫なのか?」
「大丈夫でございますよ」
「そうか、だったらこれで支払おう」
初めての客になったエルフは、小銀貨1枚を出してきたので、俺は1番大金を保有している、ローファン王国の大銅貨4枚と小銅貨5枚でお釣りを渡した。
「ふむ、見た事のない意匠の貨幣だが、純度は正確なようだな」
「はいはい、門番をされていた方に、どこの国の貨幣であろうと、エルフなら本当の価値を見抜けるとお聞きしました」
「まあそう言う事だ、見た事のない国の貨幣だが、純度と重さが同じなら何の問題も無い」
「それは助かります、ささ、熱いうちに飲んでみて下さい」
「そうか、お、美味いではないか! こんな味のスープは初めて食べるぞ!」
「そうでしょ、作り方も簡単ですし、キノコも根菜も葉物野菜も、エルフの村なら簡単に手に入るでしょう?」
「そうだな、この村特産の野菜を入れれば、もっと美味しくなるかもしれんな。だがこの海藻とやら、いったいいくらで売っているんだ?」
「今飲まれたスープに入っている海藻10人前が入って、たった小銀貨1枚です。ただキノコや野菜は別に買ってもらう事になります」
「ふむ、だったら10人前を10個、大銀貨1枚で売ってもらおうか」
「へい、ありがとうございます」
「私にも1杯飲ませてくれ」
「俺もだ、俺にも1杯飲ませよ」
「はいはい、1杯小銅貨55枚でございますが、それで宜しいですか?」
「はいよ、これでいいだろう、早く飲ませろ」
「あたしが先だよ、私から渡しなさい」
最初のエルフの嘘偽りない賛辞が利いたのか、遠巻きに見ていたエルフが次々とわかめスープを買ってくれた。一口飲んでくれさえすれば、海藻など食べた事のないエルフには、衝撃的な味だろう。
1杯飲んだエルフは、必ず塩漬けわかめ10人前を1つは買ってくれた。中には試食用に作ったわかめスープを買って、熱々のままアイテムボックスに仕舞うエルフもいた。
試食用のわかめスープも、ナーポリで作らせた塩漬けわかめも、わずか1時間で売り切れてしまった。後は仕方なく、同じくナーポリで作らせた塩を売る事にしたが、そちらも飛ぶように売れてくれたので、ナーポリの主力商品としての目途がついた。
さすがに既存の商会や商人では、エルフの村まで売りに来るのは難しいかもしれないが、それは俺が直接来れば済むことだ。いや、商魂たくましい商人ならば、魔法袋一杯に塩漬けわかめを詰め込み、この村まで来る可能性は有る。
「ミノル、本当に楽しそうだったな」
「そうか? ふむ、そうかもしれないな」
「狩りをするよりも、こうやって商売をしながら村々を巡る方が、ミノルは幸せなのかもしれないな」
「確かにそうかも知れないね、国や街の権力争いに巻き込まれるのは真平ごめんだし、責任を背負込むのも気が重い」
「だったら、このまま商人になったらどうだ?」
「そうだな、仕入れの問題もあるから、冒険者と商人の兼業をするのもいいかもしれないな」
「そうしろ、元々我が巻き込まなければ、ミノルは平和な日々を送っていたのだ。人間を助けようと無理して、身心を追い込むこともあるまい」
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