初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!
第156話権力争い
ナーポリ冒険者ギルド:冒険者ギルドマスターとミノル
「街の治安はどうなっていますか」
「ミノル殿の思惑通り、冒険者が犯罪に走る事は未然に防がれました」
「気づいていおられましたか」
「あそこまで露骨にやってくれたら、多少でも頭の回る奴は警告だと気づきますよ」
「で、どうなんです、どれくらいの冒険者が街を離れましか?」
「今まで証拠が無くて捕まえれらなかった、素行の悪い冒険者が街を離れただけで、大多数の冒険者は残りました」
「駆け出しの食うや食わずの冒険者も残ったのですね?」
「まあ大半の駆け出しは、漁船と一緒に海で亡くなりましたから、今残っているの沿岸の船に乗っていた者や、多少でも陸上の狩りが出来る者です」
「そうですか、狩りで喰えるかどうか微妙な冒険者は、漁船に乗って兼業していたのですね」
「ええ、ですがミノル殿の御蔭で、弓やスリングショットの練習をしながら、鳥や魔鳥を狩れるようになったので、多くの年少者が冒険者ギルドに登録してくれました」
「貧民街や死角になる街区で、犯罪が起こってませんか?」
「それも大丈夫です、危険が予測されるところは、領主様が軍隊を巡回させています。それに、日干しされながら浮遊するダイオウイカが、ゆっくりとナーポリ全域を浮遊するので、それに伴って冒険者も自然と巡回しています」
「ですが僕も、常にダイオウイカにばかり魔力を使う事が出来ません。常時浮遊はさせておけますが、巡回させる事が出来ない時間も出て来ます」
「なるほど、それで素行の悪い冒険者が気になられたのですね」
「はい、恐らく街を離れているだろうとは思ったのですが、念の為に確認しておきたかったのです」
「ではどうです、漁師ギルドマスターとして、正式に追放依頼をされませんか」
「ふむ、それは僕から冒険者ギルドに圧力をかけろと言う事ですか」
「はい、素行はそれほど悪くはないのですが、権力欲が強い冒険者もいるのです。漁師ギルドが著しく力を落とした事で、冒険者ギルドがこの街を仕切るべきだと考える奴もいるのです」
「冒険者ギルド内の、権力争いと考えたらいいのですか?」
「否定はしません」
「まあいいでしょう、非常時に内部で争うような奴は糞野郎ですから、追放した方がいいでしょう。ですが何故です、俺が漁師ギルドマスターなのですから、多少の頭と経験があるのなら、冒険者ギルドが漁師ギルドに勝てないことくらい理解できるでしょう?」
「ミノル殿は、ジャイアント・ホワイトホエールの件が落ちついたら、ナーポリを離れられるのでしょ?」
「何故そう思われるのですか」
「ミノル殿が世界中を旅してこられ、色々な経験をされておられるのは、冒険者ギルドでも評判になっています。そのような方が、ナーポリに定住されるとは到底考えられないでしょう。狩り甲斐のある、ジャイアント・ホワイトホエールを狩り尽されたら、次の強敵を求めて旅に出られると誰もが思っていますよ」
「なるほど、冒険者の心理は、同じ冒険者には筒抜けと言う事ですね」
「そう言う事です、だから今から準備をしておいて、ミノル殿がナーポリを離れたら動こうと、有力な冒険者に根回ししている者がいるのです」
「だったらこういう噂を流して下さい」
「どんな噂です?」
「ミノルはナーポリが気に入って、強敵を狩った後で骨休めする為の別荘を、ナーポリ郊外で探していると」
「なるほど、そう言う噂が流れれば、今回の企てに参加する冒険者はほとんどいなくなるでしょうね」
「別にナーポリの市街でなくてもいいのですよ、敵対領主との街道沿いに、別荘地を手に入れる事が出来れば、そこに城砦を構えて住みますから」
「それは、直接領主様に相談された方がいいと思いますが」
「僕は権力者が大嫌いなんですよ、相手の言動が癇に障って、族滅させた上に城まで壊した貴族は星の数ほどいます。ですが揉め事や殺戮が好きなわけではないので、出来れば権力者と接触したくないのですよ」
「なるほど、ジャイアント・ホワイトホエールを簡単に狩ってしまうミノル殿です。相手が王侯貴族であろうと、どれほどの大軍を動員しようと、簡単に撃滅させてしまうでしょうね」
「よほど歴戦の冒険者や軍隊が、連携してかかってこない限り、まずは負けないでしょうね。不利と判断すれば、一時的に撤退して、敵の弱い所を奇襲すれば済む事です」
「獲物の隙をついて弱点を攻撃するのが冒険者の信条ですから、相手が魔獣やモンスターではなく、王侯貴族や軍隊であろうとやることは同じですな」
「そう言う事です」
「私も余計な揉め事に巻き込まれるのは御免ですし、今までの言動から、領主様もミノル殿のそのような性格を察しておられると思います。ですから領主様には、私から報告させていただきましょう。領主様は、ナーポリの現状も正確に理解されておられるでしょうが、一族が全て賢明とは言えませんから」
「そうしてもらえれば助かります」
「いえいえ、私としても、ナーポリを内乱で荒らしたくはありません。それになんなことになれば、敵対領主が攻めてくるでしょうから、多くの罪なき市民が殺されてしまうことになります」
「では、お願いします」
ナーポリ朝市
「親父さん、今日の相場はどうだい?」
「昨日と同じで、ダイオウイカ襲撃前の相場で落ちついています」
「行商を行っている者達は仕入れを始めたかい?」
「始まりました。ですが以前のようには塩魚の生産が行われていないので、塩ダイオウイカを試食して仕入れるようになりました」
「ほう、だがまだ塩スルメまでは干しきれていないだろう?」
「はい、一夜干しか二日干し程度ですが、癖はあるものの酒漬けほど高くなく、何より塩辛い事が好まれたようです」
「なるほど、塩が不足して高値をつけている山岳部の村では、美味しさよりも塩辛さですか」
「そうなります」
「だったら、表面にびっしり塩の結晶が浮いた、塩スルメが完成すればよく売れるでしょう」
「手間がか合っている分、一夜干しや二日干しよりも少し高くなりますが、酒漬けほど高くはなりませんから、完成すれば飛ぶように売れると思います」
「刻んで小量使いうだけで、美味しい出汁も塩分も取れるスープになるのですから、確かによい商品になるでしょう」
「マスターが提案されて作り始めた塩干海藻もそうですが、冒険者や商人の非常食・携帯食としても有望だと思われます。堅焼きパンと干し肉だけの食事に、温かくて美味しいスープが付くだけで、生き残れる確率が跳ね上がるそうですから」
「それと新しレシピを考えたから、以前教えたレシピと同じように、無料で公開してくれ」
「マスターは無欲ですね、独占して料理を売り出せば、それだけで一財産稼げましたのに」
「漁師ギルドの商品を買ってくれた商人は、大切なお客様です。彼らに儲けてもらい、生きて帰って来てくれてこそ次の商売につながります」
「確かにそうの通りですね、マスターが自分の利益より、ギルド全体の利益を考えて下さっている事、とても感謝しています」
「当たり前の事ですよ、地位には責任が伴います。個人の利益を確保するのなら、責任のある地位についてはいけません」
「なるほど、今のお言葉肝に命じます」
「街の治安はどうなっていますか」
「ミノル殿の思惑通り、冒険者が犯罪に走る事は未然に防がれました」
「気づいていおられましたか」
「あそこまで露骨にやってくれたら、多少でも頭の回る奴は警告だと気づきますよ」
「で、どうなんです、どれくらいの冒険者が街を離れましか?」
「今まで証拠が無くて捕まえれらなかった、素行の悪い冒険者が街を離れただけで、大多数の冒険者は残りました」
「駆け出しの食うや食わずの冒険者も残ったのですね?」
「まあ大半の駆け出しは、漁船と一緒に海で亡くなりましたから、今残っているの沿岸の船に乗っていた者や、多少でも陸上の狩りが出来る者です」
「そうですか、狩りで喰えるかどうか微妙な冒険者は、漁船に乗って兼業していたのですね」
「ええ、ですがミノル殿の御蔭で、弓やスリングショットの練習をしながら、鳥や魔鳥を狩れるようになったので、多くの年少者が冒険者ギルドに登録してくれました」
「貧民街や死角になる街区で、犯罪が起こってませんか?」
「それも大丈夫です、危険が予測されるところは、領主様が軍隊を巡回させています。それに、日干しされながら浮遊するダイオウイカが、ゆっくりとナーポリ全域を浮遊するので、それに伴って冒険者も自然と巡回しています」
「ですが僕も、常にダイオウイカにばかり魔力を使う事が出来ません。常時浮遊はさせておけますが、巡回させる事が出来ない時間も出て来ます」
「なるほど、それで素行の悪い冒険者が気になられたのですね」
「はい、恐らく街を離れているだろうとは思ったのですが、念の為に確認しておきたかったのです」
「ではどうです、漁師ギルドマスターとして、正式に追放依頼をされませんか」
「ふむ、それは僕から冒険者ギルドに圧力をかけろと言う事ですか」
「はい、素行はそれほど悪くはないのですが、権力欲が強い冒険者もいるのです。漁師ギルドが著しく力を落とした事で、冒険者ギルドがこの街を仕切るべきだと考える奴もいるのです」
「冒険者ギルド内の、権力争いと考えたらいいのですか?」
「否定はしません」
「まあいいでしょう、非常時に内部で争うような奴は糞野郎ですから、追放した方がいいでしょう。ですが何故です、俺が漁師ギルドマスターなのですから、多少の頭と経験があるのなら、冒険者ギルドが漁師ギルドに勝てないことくらい理解できるでしょう?」
「ミノル殿は、ジャイアント・ホワイトホエールの件が落ちついたら、ナーポリを離れられるのでしょ?」
「何故そう思われるのですか」
「ミノル殿が世界中を旅してこられ、色々な経験をされておられるのは、冒険者ギルドでも評判になっています。そのような方が、ナーポリに定住されるとは到底考えられないでしょう。狩り甲斐のある、ジャイアント・ホワイトホエールを狩り尽されたら、次の強敵を求めて旅に出られると誰もが思っていますよ」
「なるほど、冒険者の心理は、同じ冒険者には筒抜けと言う事ですね」
「そう言う事です、だから今から準備をしておいて、ミノル殿がナーポリを離れたら動こうと、有力な冒険者に根回ししている者がいるのです」
「だったらこういう噂を流して下さい」
「どんな噂です?」
「ミノルはナーポリが気に入って、強敵を狩った後で骨休めする為の別荘を、ナーポリ郊外で探していると」
「なるほど、そう言う噂が流れれば、今回の企てに参加する冒険者はほとんどいなくなるでしょうね」
「別にナーポリの市街でなくてもいいのですよ、敵対領主との街道沿いに、別荘地を手に入れる事が出来れば、そこに城砦を構えて住みますから」
「それは、直接領主様に相談された方がいいと思いますが」
「僕は権力者が大嫌いなんですよ、相手の言動が癇に障って、族滅させた上に城まで壊した貴族は星の数ほどいます。ですが揉め事や殺戮が好きなわけではないので、出来れば権力者と接触したくないのですよ」
「なるほど、ジャイアント・ホワイトホエールを簡単に狩ってしまうミノル殿です。相手が王侯貴族であろうと、どれほどの大軍を動員しようと、簡単に撃滅させてしまうでしょうね」
「よほど歴戦の冒険者や軍隊が、連携してかかってこない限り、まずは負けないでしょうね。不利と判断すれば、一時的に撤退して、敵の弱い所を奇襲すれば済む事です」
「獲物の隙をついて弱点を攻撃するのが冒険者の信条ですから、相手が魔獣やモンスターではなく、王侯貴族や軍隊であろうとやることは同じですな」
「そう言う事です」
「私も余計な揉め事に巻き込まれるのは御免ですし、今までの言動から、領主様もミノル殿のそのような性格を察しておられると思います。ですから領主様には、私から報告させていただきましょう。領主様は、ナーポリの現状も正確に理解されておられるでしょうが、一族が全て賢明とは言えませんから」
「そうしてもらえれば助かります」
「いえいえ、私としても、ナーポリを内乱で荒らしたくはありません。それになんなことになれば、敵対領主が攻めてくるでしょうから、多くの罪なき市民が殺されてしまうことになります」
「では、お願いします」
ナーポリ朝市
「親父さん、今日の相場はどうだい?」
「昨日と同じで、ダイオウイカ襲撃前の相場で落ちついています」
「行商を行っている者達は仕入れを始めたかい?」
「始まりました。ですが以前のようには塩魚の生産が行われていないので、塩ダイオウイカを試食して仕入れるようになりました」
「ほう、だがまだ塩スルメまでは干しきれていないだろう?」
「はい、一夜干しか二日干し程度ですが、癖はあるものの酒漬けほど高くなく、何より塩辛い事が好まれたようです」
「なるほど、塩が不足して高値をつけている山岳部の村では、美味しさよりも塩辛さですか」
「そうなります」
「だったら、表面にびっしり塩の結晶が浮いた、塩スルメが完成すればよく売れるでしょう」
「手間がか合っている分、一夜干しや二日干しよりも少し高くなりますが、酒漬けほど高くはなりませんから、完成すれば飛ぶように売れると思います」
「刻んで小量使いうだけで、美味しい出汁も塩分も取れるスープになるのですから、確かによい商品になるでしょう」
「マスターが提案されて作り始めた塩干海藻もそうですが、冒険者や商人の非常食・携帯食としても有望だと思われます。堅焼きパンと干し肉だけの食事に、温かくて美味しいスープが付くだけで、生き残れる確率が跳ね上がるそうですから」
「それと新しレシピを考えたから、以前教えたレシピと同じように、無料で公開してくれ」
「マスターは無欲ですね、独占して料理を売り出せば、それだけで一財産稼げましたのに」
「漁師ギルドの商品を買ってくれた商人は、大切なお客様です。彼らに儲けてもらい、生きて帰って来てくれてこそ次の商売につながります」
「確かにそうの通りですね、マスターが自分の利益より、ギルド全体の利益を考えて下さっている事、とても感謝しています」
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