初老おっさんの異世界漫遊記・どうせ食べるなら美味しいものが喰いたいんだ!

克全

第155話恐竜卵のオムレツ

ナーポリ近郊の秘密キャンプ地

「ミノル、昨日食べ損ねたホエールのステーキを食べさせろ!」

「駄目だ、朝は玉子料理と決まっているんだ」

「だが喰いたい物は喰いたいのだ!」

「どうしてもか?」

「どうしてもだ!」

「残念だよリュウ、今日はリュウが盗って来てくれた、恐竜卵を使った肉オムレツなんだがな。あれは凄く美味いのだが、俺たちだけで食べることにするよ」

「うぬぅぅぅぅ」

「アグネス、白虎、直ぐに焼いてあげるからな」

「愉しみだみゃ、早く食べたいミャ」

「あれは美味しいからな、愉しみだよ主」

「うぬぅぅぅぅ」

「ジャイアント・レッドベアーの肉ミャ、ジャイアント・レッドベアーの脂で炒めるミャ」

「ジャイアント・レッドベアーの肉と脂を使ったオムレツは美味しいんだよなぁ~」

「チーズオムレツも食べたいミャ、プレーンオムレツにデミグラスソースをかけたやつも食べたいミャ」

「よしよしよし、直ぐに作ってやるからな」

「まて、待つんだ、余にもオムレツを作るのだ!」

「だったらミンクホエールのステーキは今晩だぞ、それでいいな!」

「うぬぅぅぅぅ、だが、だがだ、そうだ! 昨日喰ったホエールの昆布出汁鍋は残っているな、あれをスープにつけてくれ」

「往生際の悪い奴だな、だが仕方ないな、つけてやるよ。セイ、リュウのオムレツを焼いてやってくれ」

「分かった、リュウの子守は任せておけ」

「誰が子供だ!」

「食い物ごときで、毎度毎度騒ぎおって、それが子供でなくて何なんだ」

「余の本能である!」

何のかんの言っているが、セイとリュウは結構仲良しのようだ。まあそうでなければ、原初同士がこうも頻繁に会いに来ないだろう。いくら本能の食欲とは言え、各々(おのおの)世界を預かる存在なのに、リュウは自分の世界を留守にしてまで会いに来るのだから。

俺は両手と魔力・魔法を駆使して、アグネスと白虎の注文に応じたオムレツを作ってやった。アグネス用の肉オムレツにはタマネギを入れていたのだが、白虎はタマネギ抜きで作ってくれと言う。リュウもセイにタマネギ抜きを要求していたから、よほど野菜が嫌いなのだろう。だがタマネギの甘味と旨味は、肉オムレツには必須だと思うのだが、肉食の魔獣やモンスターには毒なのだろうか?

「満腹みゃ、狩りに行くミャ」

「俺はまだ食べたりんのだ、もうちょって待て」

「早く食べるミャ、狩りは愉しいミャ」

「分かってる分かってる、だが腹が減っては狩りどころではない、もう少し待て」

「仕方ないミャ、待つミャ」

「主、最後はでっかいチーズオムレツを作ってくれ」

「そうか、このでっかい恐竜の卵を2個使って作ってやるよ」

「材料」
モンスターひき肉:4kg
タマネギ    :10個
恐竜卵     :適量
牛乳      :大さじ20杯
(異世界で手に入らない場合は無し)
「下味の調味料」
酒       :大さじ30杯
砂糖      :小さじ15杯
塩       :小さじ 7杯
胡椒      :適量
醤油      :小さじ15杯
「食べる時の調味料」
ケチャップ   :適量
ウスターソース :適量
醤油      :適量
マヨネーズ   :適量
(異世界で手に入らない調味料は代用もしくは諦める)

1:タマネギは薄切りにし、下味用の調味料好みの割合で合わせておく。
(異世界代用のタマネギみたいな野根草ででもよい)
2:油を牽いてひき肉を炒め、出てきた余分な脂はペーパーで軽くとる
(油が高価な場合は、獣や魔獣の脂で代用)
3:タマネギも加え、しんなりしたら下味調味料も加え、火を強めにして水分を飛ばす感じで炒め一旦取り出す
4:卵と牛乳を混ぜる
(異世界で牛乳が手に入らなければ無しでいい)
5:食べる人に合わせたフライパンに油を牽いてを熱し、4の卵を流し入れふちから大きく数回ヘラを入れる。
6:半熟のうちに3の肉を入れてる
7:端に寄せながら両脇の卵をよせて形を作る
8:付け合せや彩のハーブ等を添えて好きな調味料やソースをかけて完成

アグネスと白虎が食べ終えてから、自分の分の恐竜卵オムレツを作って食べてみたが、鶏卵とそんなに違いを感じない。これならドローン配送で卵を取り寄せる必要が無くなるだろうが、だがどうなんだろうか?

リュウは有精卵と思える翼竜卵と恐竜卵を、アイテムボックスに入れて運んできた。本来アイテムボックスや魔法袋は、生きている物を入れる事は出来ない。だったら生きているとはどこからなのだろうか?

受精した時点では生きていると言う事にならないのなら、卵細胞の分裂のどの段階から生きていると言う事になるのだろうか?

魂が卵細胞に宿るのは何時からなのだろうか?

手当たり次第に有精卵をアイテムボックスに入れてみて、入らなくなった時点の卵を割ってみれば確かめられるのだろが、何か生命を冒涜(ぼうとく)しているようで試したくない。




ザトウホエール群生地

「晩飯は絶対ミンクホエールのステーキと竜田揚げを喰わせてもらうからな!」

「分かってる分かって、晩飯用のホエール料理は完成しているから。それにホエールカツも揚げてある。しかもチーズから梅肉入りまで入りまで、何種類も作ってるから満足させてやるよ」

「なあミノル、昼食に食べさせてくれないだろうか?」

「駄目だよ、昼食は開拓村の料理を食べないと、リュウを慕っている開拓民ががっかりするぞ」

「うぬぅぅぅぅ」

「それよりきりきりとザトウホエールを狩れよ」

「自分達で狩ればいいではないか、ミノル、セイ」

「俺達はリュウ達の料理を作るのに沢山の魔力を使っているんだ、狩りくらいはリュウがやってくれないとな」

「うぬぅぅぅぅ」

「それにな、ホエールの解体にも大量の魔力を使うんだ」

「馬鹿を言うな、ミノルやセイの魔力総量から言えば微々たるものではないか!」

「そうではないぞ、セイがホエールの解体を完璧に会得するには、何度も何度も大量の魔力を使って練習しなければならない。セイが解体を会得すれば、開拓村にいる分身体もホエールを解体出来るようになるんだ。そうなれば、開拓村でも美味しいホエール料理が喰えるんだぞ」

「うぬぅぅぅぅ、仕方あるまい。ミノルやセイの魔力総量から言えば、明らかな言い訳だと分かっている。だが、分身体がホエール解体を会得すると言われれば、ミノルの言い分を聞かねばなるまい」

「頼んだよ、リュウが狩ったザトウホエールの半分は晩飯の料理用に貰うが、半分はリュウの自由に使える。開拓民に分け与えてやれば、脂は鯨油として明かりに使える、食用にもできる」

「うむ、仕方あるまいな、繁殖に影響がないように、雄を適当に狩ってやろう」





ナーポリ朝市

「マスター、何か御用でしょうか」

「やあ、親父さん、相場の方はどうなっている?」

「マスターの思惑通り、平常通りにまで値下がりしています。冒険者達が鳥や魔鳥を狩って、それを売り出した事が影響していると思われます」

「そうか、鳥や魔鳥は大した金にはならないが、冒険者の食い扶持くらいにはなるだろう」

「ですがマスター、その影響で、生産コストが必要な酒漬ダイオウイカの売れ行きが悪くなっています」

「売ってくれている者達には悪いが、ナーポリ全体の事を考えれば、酒漬ダイオウイカの売り上げ減少は仕方がない。暮らしていけないほど、売り上げが悪くなっている訳では無いのだろう?」

「はい、初日や1日目のようなぼろ儲けが出来ないだけで、普通の魚介類を売るよりは儲かっています」

「だったらこのまま行ってくれ、いずれは他の商品も開発するから」

「分かりました、身勝手を言う奴はぶちのめしてやります」

「頼んだよ」

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